国連安全保障理事会は8日、パレスチナ自治区ガザでの人道目的の即時停戦を求める決議案を採決したが、常任理事国である米国が拒否権を行使して否決となった。決議案はグテレス国連事務総長が6日、国連憲章の第99条に基づき、理事国に対して「人道的大惨事」の回避と人道的停戦を宣言するよう要請したことを踏まえ提出された。
理事国15カ国のうち、日本を含む13カ国は賛成に回った。英国は投票を棄権した。
決議案はアラブ首長国連邦(UAE)が提出した。イスラエルとイスラム組織ハマスの双方に停戦を呼びかける内容で、アラブ諸国や中国、ロシアをはじめとする100カ国以上が共同提案者となった。
午前の会合に参加したグテレス氏は「安保理の各理事国に対し、早急な人道的停戦と市民の保護、緊急援助の提供を強く求める」と述べた。「ガザにおける人道支援システムが完全に崩壊する危険性が高い」とし、周辺国にも安全保障上の影響が及んでいると事態の深刻さを訴えた。
これまでも安保理は、6回にわたりガザ情勢を巡る決議案を採決にかけてきた。採択に必要な賛成票を集めても、常任理事国は拒否権を行使することで決議案を否決できる。米国やロシア、中国がそれぞれ拒否権を行使して対応がまとまらない展開が続いていた。
11月中旬にマルタが提出した緊急かつ「人道的な一時休止」を要請する5回目の決議案がようやく採択された。戦闘は11月24日に一旦休止したが、12月1日には再開した。戦闘再開でガザ市民らの被害が拡大しており、累計の死者数は2万人に迫る。
そうしたなか6回目の決議案が提出されたが再び、常任理事国の拒否権で決議案が反故になった形だ。
国連事務総長が99条を持ち出して安保理の対応を求めるのは極めて珍しく、拒否権の発動には重い責任がのしかかる。民間の犠牲が増え続ける中、中東和平に向けた現実的な解を見いだせなければ、国際社会における米国の孤立は深まることになる。
出典 日経新聞(12/9)