岡山県総社市の山間部にある昭和地区に来春、同県初で全国的にも珍しい幼稚園併設型の義務教育学校が誕生する。名誉校長に世界的なアルピニストで環境保全活動にも取り組む野口健さん(50)を迎えて特色ある学校園づくりを目指しており、片岡聡一市長は「優れた環境の中で子どもが育つ日本一の学校にしたい」と力を込める。
2024年4月に開校するのは「昭和五つ星学園」。同地区の五つの市立幼稚園、小学校、中学校を再編して、幼稚園3年と義務教育9年の計12年の一貫教育を実現する。現昭和小の校舎を小学1〜5年生が学ぶ「1―5アクティブキャンパス(AC)」、現昭和中の校舎を小学6年生から中学3年生までが通う「6―9フロンティアキャンパス(FC)」とし、ACに隣接する現昭和幼稚園の園舎を「幼稚園さくらキャンパス」とする。
教育目標は「友 地域 未来とつながり 考え、表現・行動する子どもの育成」。ACとFCには、それぞれ地域に向けて学習成果を発表したり、異なる学年の児童生徒と交流したりする「交流活動ルーム」を設けるほか、14年から取り組んできた「英語特区」を継承して12年間の充実した英語教育を実施する。また「山の中の環境留学」を掲げ、豊かな自然に直接触れながら子どもが自ら課題を見つけて答えを探る学習を充実させる。
10月31日には、現昭和中の体育館で名誉校長の委嘱状交付式があり、片岡市長が野口さんに委嘱状を手渡した。あいさつに立った野口さんは、集まった5校園の児童生徒や保護者約200人に「森を育てたり、自然を体験したりする中でちょっとしたピンチも経験しながら生命力を養えるような学校になればと思う。みんなでいい学校を作りましょう」と語りかけた。
その後、野口さんと片岡市長は舞台を降りて児童生徒の真ん中に座り、「野口名誉校長と新しい学校でやりたいこと」をテーマにディスカッション。児童生徒からは山登りやテント生活などアウトドアの活動をしたいとの意見が多く、「川遊びをしたい」と声が飛ぶと、野口さんは「川は危険もあるから『近づいてはいけない』と言う大人もいるが、禁止するだけでは何が危ないのかが分からない。山や川で遊ぶことは非常にいいこと。だけど、何に気をつけるべきかをきちんと学んでから遊ぶのが大事」と応えていた。
昭和五つ星学園は、通学可能であれば居住地を問わず入園・入学者を受け入れる。
片岡市長は「野口さんの限りない発信力に期待している。全国に環境問題を発信していく学校にしていきたい」と強調した。
出典 毎日新聞(11/8)