日本の18歳人口は92年の205万人をピークに減り続け、22年は112万人とほぼ半減。40年には82万人と予想されています(※1)。なお、昨年生まれた子どもは77万人なので、実際には18年後は82万人よりかなり少なくなりそうです。これは少子化のスピードが想像以上に加速していることを意味しています。一方、大学の数を見ると92年は523大学でしたが、22年は807大学と逆に増えており、学生の獲得競争は激化しています。65年の18歳人口の予測値は68万人です。「今、新卒で大学の職員になる人たちが定年を迎えるのがだいたいこの頃で、40年後の大学の職場環境は激変していることが予想されます」と大学職員は話しています。
(※1)出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年)」出生中位(死亡中位)推計
92年の大学進学率は26.5%だったが、22年は56.6%に上がっている。進学率が上がると何が起きるのか。
「これまでの大学生と今後の大学生では必要なサポートが全然違うと思います。『大学生だったら自分で勉強できる』という私たちのイメージが変わり、通常なら大学に合格できない層の学生が、合格水準が大幅に低下することで大量に入学してくるので、大学職員がやるべき業務がガラッと変わってくるはずです。現在も既に授業に出てこない学生に電話連絡したり、担任制を設けたりという大学は珍しくありません。中学生ぐらいの感覚でサポートにあたる大学はますます増えるでしょうし、面倒見の良い人材が求められそうです。また、大学は巨大客船のように多くのメンバーで動かす組織ですので、職員1人ひとりが関われる範囲は限定的ですし、1年や2年では結果が出ない施策も多い。長期的な視点で、留学生の招聘や中退者の抑制など、学内の問題をコツコツ努力して少しずつ解決に近づけていけるような人はむいているかもしれません」
となると、大学職員になるのも覚悟が必要のようだ。
「『大学は安泰』というイメージはあるでしょうが、急激に進む少子化の波によって多くの大学が危機に瀕すると思います。その際は優良経営の他の私立大に転職するという選択肢もあるでしょう。教育への強い思いや大学経営に関する何らかの専門性を持っていることは大事です。公務員と併願する方も多いようですが、法令や規定をベースに動く真面目な組織という点は似ていますね。ただ、広く市民に対応する公務員に比べ、大学のステークホルダーは若者中心といった違いはあります。グローバル教育に力を入れる大学では、国際的な業務を担当できる語学力の高さや留学経験を評価されて採用される学生もいます。地方の国公立大などでは、地元の県庁や市役所との併願者が多く、『結果的に県庁や市役所の方を選ぶ内定者も少なくない』といった例もあるようです」