北九州市は65歳以上が人口の3割を超え、全国の政令市で高齢化率が最も高い。足腰が弱まるとされる75歳以上の人口は2020年の約15万6000人から、30年には約18万7000人と2割増えると見込まれる。エレベーターがない団地で階段の上り下りができなかったり、ごみ置き場までに坂道があったりして、ごみ出しが難しいと訴える人は増えている。
高齢者が不安を抱く背景に、ごみ出し特有の事情がある。ごみ出しの時間は朝や夜が多く、日中にホームヘルパーなどの福祉サービスでカバーすることが難しい。一方、核家族化や地域コミュニティーの希薄化で、周囲に助けを求められず孤立する人もいる。
市内では、社会福祉協議会やシルバー人材センターが高齢者らのごみ出し支援をする。だが、ボランティアは減少し、近くに支援会員がいないこともある。
市は14年から週1回の指定日に、市民が玄関前にごみ袋を出せば市職員が回収する事業を開始。自力で日常生活を送るのが困難な「要介護2」以上や障害福祉サービスを受給する単身世帯が対象だったが、21年からは、一定の要件を満たし市環境局長が認める人も対象に加え、22年度は594世帯が利用する。
担当者は「施設に入らず、自宅にいたいという要望の増加など、社会の変化もある。利用者数に応じた収集体制を作っていく必要がある」と課題を口にする。
国の人口推計によると、全国の75歳以上の人口は20年の1860万人から30年には2261万人とピークを迎え、その後も全人口に占める割合は増え続ける。
総務省は19年から、自治体のごみ出し支援の経費の半分を手当てする。環境省も21年に自治体向けに支援の手引を作成した。支援を導入する自治体は18年度の23・5%から20年度は34・8%に拡大している。
横浜市や大阪市は、ごみ出しが困難で親族や近隣住民の協力が得られなければ、65歳以上世帯は玄関前収集をする。利用世帯は23年3月で横浜市が約9400世帯、大阪市が約1万1000世帯と多い。両市とも収集業務が直営で財政規模も大きいため、手厚い支援が可能となっている。