尹美香(ユン・ミヒャン)氏は2020年4月の韓国総選挙で当選。最大左派野党「ともに民主党」所属の議員として活動してきたが、慰安婦運動の基金着服疑惑により党から除名処分を下されて。議員活動を続けている。
検察側は法廷で「被告人は組織の代表として、不特定多数から受けた寄付金を横領して、罪質が非常に悪い。横領の規模が大きく、長期間にわたって犯行が行われ、韓国挺身隊問題対策協議会側に賠償されず、被害の回復がなされていないなどの理由から、一審の判決は過度に軽い」と述べた。寄付金の横領疑惑で起訴されて、検察が懲役5年を求刑した2審公判に出席した。
今年2月に行われた1審では「法人口座に保管されていた資金1700万ウォンを私的に使用したとして」一部の業務上横領の罪だけを認め、被告の尹美香氏側に罰金1500万ウォンのみが言い渡されていた。
検察側が控訴しての法廷の場で、尹氏は最終陳述に臨み、こう反論した。
「慰安婦の被害者たちは30年前に韓国挺身隊問題対策協議会の活動家たちと会い、苦しい経験を世界に公開し、誇り高く人権回復運動の主体となった。その中心にキル・ウォノク、キム・ボクドンおばあさんがいた」
「しかし、3年前のイ・ヨンスおばあさんの記者会見以後に起きた一連の出来事と報道によって、被害者の主体的な人権回復運動は、私に引きずられた非主体的で受動的なものと侮辱され、攻撃の中で大きな傷を負った」
検察は2020年9月、尹氏を業務上横領、詐欺、補助金管理法違反など6つの罪で起訴。尹氏は2011年から2020年までの間に正義連の前身である韓国挺身隊問題対策協議会の資金約1億ウォンを個人用途に使用したとされる。
また2017年から2020年までの間に、日本軍の慰安婦の被害者であるキル・ウォノク氏の痴呆の傾向を利用して7920万ウォン(約800万円)を寄付・贈与するようにしたとの疑惑もある。さらに、政府とソウル市の補助金を不正に受け取り、所轄庁に募集計画を登録せず、慰安婦支援団体を通じて寄付金を募集したという疑いも持たれていた。
尹被告は寄付金約1億ウォンの私的利用に加え、認知症の元慰安婦をだまして団体に寄付させた罪などで在宅起訴された。1審判決で約1700万ウォンとされた業務上横領について、控訴審判決は約8千万ウォンだったと認定。補助金6500万ウォンを不正受給し、元慰安婦の葬儀費名目で違法に寄付金を募ったことも新たに有罪と判断された。
判決後、尹被告は記者団に「慰安婦問題解決のための30年間の運動がおとしめられることのないよう最善を尽くす」と主張した。
尹被告は20年の総選挙で初当選したが、事件発覚を経て21年に当時与党だった「共に民主党」を除名された。1審判決後に政治活動を活発化させ、今月1日には在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が東京で開催した関東大震災100年追悼行事に出席。韓国の国家保安法上「反国家団体」にあたる総連との接触に必要な事前申告を行っておらず、韓国統一省は尹氏に過料を科す手続きを進めている。
無所属議員として活動中だが、最高裁で懲役刑が確定すれば、議員職を失う。今年2月の1審判決は、罰金1500万ウォン(約160万円)だった。尹被告は控訴審判決を不服として上告する方針。