要介護状態になるのを避ける、できるだけ遅らせることが重要です。そのカギのひとつは、立ち上がるときや転倒の防止に必要な「筋力」にあります。本連載では、年齢を重ねた親と子が一緒に考え、取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。5回目は、高齢者が安全かつ効果的に筋力アップするための方法。
いくつになっても始めるのに遅すぎることはありません。体力の衰えを感じたらできるだけ早い段階で、「老化の速度にブレーキをかける気持ち」に切り替えることが重要になります。
日常生活を円滑に過ごすための体力「生活関連体力」の重要度が高くなっていきます。そのため、「筋力と同時に、バランス感覚・上手に細やかに動く力・すばやさ・柔軟性などの『調整力』を強化することが非常に重要になる」と、スポーツ医学の第一人者で筑波大学名誉教授の田中喜代次氏は話します。調整力のトレーニングには、複合的な動きを必要とする運動を取り入れるとよいそうです。それによって、転倒しにくいからだを作ることができ、転倒したときの骨折防止、認知症の予防などにも役立つそうです。
「調整系のトレーニングの中で、安全性と有効性の両方を満たす種目として、水中運動(アクアビクス)や水泳がおすすめです。ただ、いつでもどこでもできる種目ではないので、例えばシニアが気軽に取り組めるグラウンドゴルフ(目標頻度:週3日)に、筋トレ(同:週3日)とテレビ・ラジオ体操または「シルバーリハビリ体操」(同:毎日)を組み合わせるとよいでしょう。グラウンドゴルフの代わりに、卓球、バドミントン、太極拳、ボウリング、ダンスなどを楽しむことも有効です」(田中氏)
ポイントとして、過去に経験のない種目を始めれば、ゼロからのスタートとなり、やればやるほど上達し、熱中できて習慣化する人が多いそうです。その一方で、ケガの確率が上がらないようにするために、適量のトレーニングを計画的にこなし、常に身体のケアを怠らないことが肝要です。シニアの場合、負荷のかかる運動は、週に3回、1回20分くらいが適切でしょう。
高齢者が鍛えたい筋肉としては、まず脚があげられます。
歩いたり、からだを起こしたり、移動させたりする能力の維持のため欠かせません。
主なものとして、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)、前脛骨筋(すねの筋肉)、腸腰筋(上半身と下半身をつなぐからだの中心部の筋肉)などがあげられます。