筑波大学名誉教授、村上和雄氏は21世紀は日本の世紀なるだろうと言われる。
日本の出番なんですとを私が初めて聞いたのは、チベットのダライ・ラマ法王からでした。
彼は五十年もの間、中国から迫害を受けています。
その中国に対して、彼は「我が先生です」と言っています。
なかなかすごい言葉ですね。自分を迫害する人を師だというわけですから。
でも、それが彼の本音だと私は感じました。
あの弾圧がなければ、ダライ・ラマは単なるチベットの法王であり、チベットの国王にすぎなかった。
しかし、弾圧されたことによって彼は世界に出ました。
おそらく平和の問題を、民族を超えて、宗教を超えて語れるのは、彼しかないと思います。
ニューヨークに行きますと、セントラルパークに何万人という人が彼のメッセージを聞くために集まります。
そういう人になれたのは、厳しい弾圧があったからなんですね。
彼の言葉を聞いて、私の理論が少し変形されました。
私はストレスをネガティブ・ストレスとポジティブ・ストレスの二つに分けて考えておりました。
ネガティブなストレスは、ネガティブな遺伝子のスイッチをオンにし、ポジティブなストレスは、ポジティブな遺伝子のスイッチをオンにする、と考えていたんです。しかしダライ・ラマを見ていると、厳しい弾圧というネガティブなストレスが、彼のポジティブ遺伝子のスイッチをオンにしているんです。彼が世界的な宗教家になれたのは、厳しい弾圧のおかげなんです。
彼は最後に私を呼んで、「21世紀には日本の世紀が来ますよ」と言いました。
私は「ほんまかいな」と思いました。毎日の新聞を読んでいたら、とても日本の出番だとは思えなかったからです。
しかし、外国から日本を見てみますと、私どもが考える日本と、外国人が見ている日本とでは大きな違いがあるんですね。
出典
『君のやる気スイッチをオンにする遺伝子の話 』致知出版社
なぜ、ダライ・ラマ法王が21世紀は日本の時代だと言ったのか。
それは、日本人の心の底にある「フォー・アザーズ」という思い。
これは、「他者のために」という考え方で、これは日本の大震災のときに発揮された「助け合いの精神」。
仏教でいうなら、『衆生無辺誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)』という、「人のために尽くそうという願いを持つ」こと。
神道でいうなら、『世のため人のために尽さしめ給へ』という、「世のため人のために尽くさせてください」。
そして、日本には科学技術や経済力と同時に、大自然を畏敬するという風土がある。
それは、大震災のとき、高校生が言った言葉「私たちは天を恨みません」という言葉に表されている。
今、日本は人口減や、経済力衰退など、様々な問題が押し寄せている。
現状では、これから、日本の時代が来る、などとは考えもつかない。
しかし、ダライ・ラマ法王の言葉の通り、数々の難問やハードルこそ、我が師。
日本の時代がくるというのは、日本人が世のため人のために尽そうとDNAがあると見抜いてのことなのかもしれない。