かつて日本では節制が美徳とされました。しかし、幸せな高齢者というのは、要するに好きなことができている人だと思います。70歳を越え、楽しく充実した暮らしを送り、毎日に幸せを感じている人は「幸齢者」。頑張って生きてきたのですから、もっと明るくて希望の持てる呼び方にすべきだと、私は常々思っています。
そこで、和田秀樹氏は、これからは「高齢者」ではなく、「幸齢者」と呼ぼうと提案しています。そんな呼び方なら、温かみや年をとることへの希望も感じられるのではというのです。
80代後半になれば、否応なく、アスリートであった人でも筋肉の衰えを自覚しますし、半数の人に認知症の症状が現れます。体の頑張りも利かなくなっていきます。「そのようになる前」が大切です。人生の分岐点はまさに“ここ”にあります。
たとえば80代になっても、知的好奇心を失うことなく、多彩な人間関係を保っている人がいます。そういう人は、70代を自由奔放、活力いっぱいに過ごした人です。定年後の60代、あるいは70代をどう過ごすかは、ことほどさように人生の後半生を大きく左右する重要な選択になるのです。
じつは前頭葉は、40代から萎縮が目立ち始めます。幸い、前頭葉は、使い続けている限り、そう急激には衰えません。70代になったからといって自分にがまんを強いることなく奔放に生きていけば、前頭葉が衰えるスピードを遅らせることができるのです。
家に閉じこもって本を読むのではなく、外に出て、同年代の友人たちと議論したり、映画や演劇の感想を語り合ったり、あるいはブログやホームページのようなアウトプットの場を設ける。そのほうが、脳ははるかに刺激され、若々しさを保つことができます。
☆彡和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。つづき