改定後の年金支給が6月に迫り、2023年1月20日、厚生労働省から2023年度の年金額の改定額が再注目。年金額はアップしたが、受給額の増額率は、67歳以下の人(新規裁定者)と68歳以上の人(既裁定者)で異なります。もっとも、2022年度以前の年金額改定をみると、新規裁定者と既裁定者の年金額の増減率は同じでした。
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)−2021年(令和3年)詳細結果−(二人以上の世帯)」によると、70歳代以上の貯蓄の平均額は2318万円ということです。年金額の増減を想定して将来の家計収支を考えてみましょう。
では、次に年金の受取額を試算してみましょう。
★パターン1:会社員の夫・専業主婦の妻で夫が先立つ
この場合、夫が生存している時、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金、妻は老齢基礎年金のみ受給しています。夫と妻、そして世帯として受け取っていた年金額は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(3)世帯:(1)+(2)=269万3784円
夫が先立った場合、妻は夫の老齢基礎年金分から支給される遺族基礎年金は受け取れず、老齢厚生年金分から受け取る遺族厚生年金は4分の3を受け取ることとなります。そのため、夫が先立った後に妻が受け取れる年金は下記のとおりです。
(1)夫の分:遺族厚生年金 110万3784円×4分の3=82万7838円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(3)世帯:(1)+(2)=162万2838円
夫の生存時と比べると、世帯収入は約60%となります。なお、夫の遺族厚生年金分である約83万円には所得税や住民税は課税されません。
★パターン2:共働きで夫が先立つ
この場合、夫生存時は夫も妻も老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給しています。ただし、前出のとおり妻の老齢厚生年金受給額は夫の2分の1と仮定します。そうすると、夫と妻、そして世帯として受け取っていた年金額は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 55万1892円
(3)世帯:(1)+(2)=324万5676円
夫が先立った場合、妻は夫の遺族基礎年金は受け取れず、妻自身の老齢基礎年金は受け取れますが、複雑なのが遺族厚生年金です。遺族厚生年金は、次の内、最も高い金額が受け取れる仕組みとなっています。
A:夫の老齢厚生年金の4分の3
B:夫の老齢厚生年金の2分の1、または妻の老齢厚生年金の2分の1
C:妻の老齢厚生年金
今回の想定では、最も多いのはAですので、夫が先立った後に妻が受け取れる年金は下記のとおりです。なお、要件を満たせば中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算も受給できますが、金額もそこまで多くないため今回は割愛します。
(1)夫の分:遺族厚生年金 110万3784円×4分の3=82万7838円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(3)世帯:(1)+(2)=162万2838円
夫に先立たれた後の年金支給額はパターン1と同じになりますが、夫生存時との支給額の比率は約50%と、妻の収入があるということが前提になり、パターン1よりも低くなります。
★パターン3:共働きで妻が先立つ
この場合も、夫生存時はパターン2と同様の年金額を受け取っているため、受給額は下記です。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 55万1892円
(3)世帯:(1)+(2)=324万5676円
このケースでは妻が先立ちますので、夫は妻の遺族基礎年金は受け取れず、夫自身の老齢基礎年金は受け取れます。また、遺族厚生年金については、次の内、最も高い金額が受け取れます。
A:妻の老齢厚生年金の4分の3
B:夫の老齢厚生年金の2分の1、または妻の老齢厚生年金の2分の1
C:夫の老齢厚生年金
今回の想定では、Cが最も多くなりますので、妻が先立った後に夫が受け取れる年金は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻の分:無し
(3)世帯:189万8784円
妻生存時と比べると、約59%の収入となりました。
参考 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html