「老後」は仕事や家族の扶養などの負担から解放され、特に仕事を引退してから介護が必要となるまでの20年〜25年ほどは、生活習慣病など持病はあってもそこそこ元気で貴重な時期のはずだ。
生命保険文化センターによれば、介護期間は平均約5年1カ月(61.1カ月)だ。2020年時点の平均寿命は、男性が「81.56歳」、女性が「87.71歳」とはいっても、それから40年後の2060年(80歳)時点では男性が「85.22歳」、女性が「91.26歳」と推計されている。このことから、日本人全体の平均寿命は、2020年では約85歳だが、2060年では約89歳と仮定されている。
また、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、住宅リフォームや介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用は平均合計74万円で、月々の介護費用は平均8.3万円となっている。つまり、介護費用は1人当たり平均581万1300円かかる計算で、夫婦2人分だと1162万2600円となる。ということで、65〜90歳の25年間で必要となる費用の総計は、1939万4100円が見込まれるというわけだ。夫婦が先の不安なく老後を送るためには、貯蓄額を2000万円以上との計算もいわれる。「2000万円」という金額は、現役を引退して年金収入が主となったあと30年生きるとすると、高齢夫婦2人が標準的な生活を送った場合に毎月不足する金額約5万5000円の30年分(約1980万円)からきています。つまり、2000万円は自分で準備しておく必要があり、それを「老後2000万円問題」と呼んでいます。単純計算で35歳から月5万5000円の貯蓄を30年間続ければ1980万円となり、達成可能の額です。
そして、今は健康だとしても見落としがちな介護と葬儀だ。実は、介護費用は25年間の生活費よりも高くなる恐れがあるので要注意だ。本格的な介護期になれば、在宅介護の費用が毎月ほぼ5万円だ。施設介護の場合、特養の4人部屋と個室の差額が大体5万円ぐらいだろう。このところは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「家族葬」「直葬・火葬式」が増加し、「一般葬」が減少。鎌倉新書によれば、葬儀費用の平均総額は約110万7000円で、前の調査では約184万円だった。これは葬儀費用は思わぬ出費となるため、別枠で残しておくことだ。
そこで、旅行や買い物、会食などでお金を使いながらも、夫婦での豊かな老後にするための「4つのチェックポイント」をクリアしていけば、先が読めるのではないだろう。
例えばだが、年金収入が、額面で年180万円(月15万円)の世帯なら、75歳に繰り下げれば年151.2万円が加算され、75歳以降の年金額は額面で331.2万円(月27.6万円)に増えて後半の生活が豊かになる。一つ目は、まず65〜74歳の10年間の貯蓄計画をしてみよう。65歳時点で2000万円以上の貯蓄が見込めるなら、年金受給年齢を75歳に繰り下げるという選択肢もある。年金受給を10年間棚上げして頑張ると、75歳になって以降には月々の年金収入が約1.8倍になるというわけだ。しかし、「早く亡くなれば年金を受け取れず、繰り下げたら損してしまう」という意見もあるだろう。確かに、例えば平均寿命の84歳で亡くなってしまうと、旨味はないので、90歳も超えて長生きできるなら、超高齢夫婦の生活に余裕がでるが、足腰も壮年期と変わらない75歳までのゴールデンエイジに旅行したり、胃腸や歯が丈夫で好きなものを気にせず食べられる今の健康状態を維持できるかどうか見ながら決定していく。
二つ目は、消費支出の動向だ。ウクライナ侵攻であらゆるモノが値上がりし、物価高などで食料費や光熱・水道費はもっと負担が増える恐れがある。そして、長生きする以上、持ち家であっても住居費はなにがしか掛かる、マンションの住宅ローンを払い終えた人なら管理費などの1万〜2万円程度で済むが、大規模修繕も額が増してくるし、「持ち家」であれば管理費などはなくてもの思わぬ修繕費や、設備の劣化によるリフォームといった急な出費が見込まれる。
賃貸なら家賃の値上がりなども払うので月額は更に多い。総務省統計局の「家計調査(家計収支編)2023年」によると、60歳以上(単身世帯)の平均家賃(民営家賃・公営家賃)を総務省統計局「家計調査(家計収支編)2023年」を基に毎月6万7100円(民営家賃)の家賃と仮定すると、年間で約81万円に。それを、65歳から90歳までとすると2000万円以上かかることに。年金だけで生活している方は大きな負担になる。そこで、郊外、地方への移住を考えてみる手もあるし、自宅を担保にして余裕金を得るリーバスモーゲージなども可能性を検討するのも手だ。
三つ目は、出費を抑えるなら、自家用車をカーシェアする。毎月3万円ほど(保険料、税金、ガソリン代、駐車代など)かかっていたがこの機会に手放し、カーシェアで必要な時は借りる。差額で2万円ほど家計費が軽減する。他に、民間保険を見直したり、今は格安の携帯電話や旅行もたくさんあるから一考してみよう。
四つ目は、有償ボランティアで月に1〜3万円ぐらい収入を稼ぐ、ちょいビズを複数登録するのも、社会貢献であり今風だ。シルバー人材センターで仕事を紹介してもらうといい。いずれ有償ボラなども出来なくなっても、70台後半になると活動量も減りその頃には自動車も手放しているし、全体の家計費もかなり減るのだから、先走って不安ばかりにならなくていい。
一人暮らしで病気になったときに、身元引受を遠方の子ども達に頼むのも気後れする場合もあろうかと思うが、その場合の「心託」方法もあるので、前もって備えておこう。
つづき