昨日は、我孫子の文化を守る会で「白樺と民藝、行商の時代を経て、男女の平等へ」というテーマでお話をさせていただいた。雨の中、30人近い参加者で嬉しくも恐縮でした。
そこで、我孫子との関わりを通じて男女の平等について会場の皆さまと考えることにしました。農家の嫁が籠背負いの稼ぎで家を建て、子供を大学へ出してやれたという働きぶりだったという研究調査がされており、常磐線・成田線のこの辺りからも相当数が出稼ぎ列車の乗員だったなどを紹介、そして、白樺の女性芸術家・柳兼子の貢献など、男性に伍して女性たちのチカラを社会を支えてきた事実を伝え、未だに国際社会では日本女性の地位が最低に近い事情を考察しました。
さてさて、下記はフランスの国民的女優・歌手リーヌ・ルノーが新作映画「パリタクシー」に主演して、インタビューに答えたものです、壮絶な女性の生きざまを語りながら、94歳の現在も美しく、現役で活躍される姿に、女の人生も捨てた物じゃないと思わせてくれましたので、ご紹介です。
70年代の半ばまで、フランスでは中絶は合法でなく、女性は夫の承諾なしには叩くことも、得たお金を使うこともできませんでした。 リーヌ・ルノーは1945年にパリで初めて歌のオーディションに合格し、ムーラン・ルージュやカジノ・ド・パリなどでシャンソン歌手として活動し始めました。そして、中絶が合法になる前、リーヌ自身も17歳のときに妊娠したのです。当時は、ですから不法に中絶をするしかありませんでした。歌わない寂聴さんと言えるような芸術家の人生と言えそうです。2022年には仏最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章を受賞しました。1928年7月2日生まれ。エイズアクティビストと尊厳死法制化への活動を長きにわかり行ってきました。
リーヌの曽祖母や祖母も夫から暴力を受けていましたが、でも彼女たちは強く生きました。彼女たちの人生は私に、自分の人生を生きることと、闘う力を与えてくれました。特に、80年代の半ばからエイズ撲滅運動に注いだ時期に、そうした彼女たちの生き方が力を与えてくれたと言います。最新作の映画「パリタクシー」の主人公・マドレーヌも闘う女性なのです。私たちは自分で自分を守り闘うことができるという点で共通しています。
劇中でマドレーヌが言う「ひとつの怒りでひとつ老い、ひとつの笑顔でひとつ若返る」というセリフが一番好きだとリーヌは話しています。「自分が明るくハッピーな性格でよかったと思っています。いまも人生が喜びに満ちています。80年前から応援してくれているファンもいますし、若者も新たなファンになってくれています。だからこそ94歳のいまも女優として歌手として、若々しく活動できているのだと思います。元気の秘訣は「いま生きていられることを幸運だと思うこと」でしょうか。人生は難しく、常に闘いでもあります。それでも人生は美しいものです。まずは自分を愛すること。それによって人生は美しくなります。パリには観光客なら誰もが訪れたい名所が多くある都会、そしてタクシーが入れないような裏路地の小さなお店など、全てがリアルに映画のシーンに存在するスポットだらけです。パリってこんなに美しいんだ。パリってこんなに猥雑なんだ。様々な人がいろんなパリの表情を見つけることでしょう。それはきっと、マドレーヌが最後に目に焼き付けたかったパリの生き生きとした本当の姿であり、映画「パリの空の下」の主題歌を創唱・リーヌの見てきた時代のようです。
女性をめぐる社会状況はよくなってきているとは感じるが、しかし、いまもさまざまなフェミニズム運動が行われ、多くの人が闘っています。いまでも男性のなかには自分を女性より優れていると思っている人がいて、常に女性は自分を擁護しなければなりません。時代が変わってきたことをうれしく思いますが、やるべきことは残っています。
(構成/フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2023年4月14日号