大谷翔平選手は、WBC優勝後のコメントで、韓国野球界をもうならせた。野球界の発展のためにと、高い次元での発言をしていたことに、特に日本に対しては、スポーツマンシップ以上に対抗意識をもつ組織である野球界も動かした。
そんなおり、武藤正敏元駐韓大使は、慰安婦問題も徴用工問題も市民団体が盛り上げた問題であると分析しするコメントを発した。その際に、
『それでも韓国に住みますか』の著者・豊璋氏の在日としての観点からの発言にも注視していた。武藤氏が著した『韓国人に生まれなくてよかった』(悟空出版)と通底する部分があるというのだ。
在日1世の著者・豊璋氏は祖父に「強制労働」について聞いたところ「”仕事で来た!“以上、終了である」とのこと。当初、元徴用工の要求は「不払い賃金を返してほしい」というだけだった。しかし、韓国の「常識」としての理解は「奴隷のように働かされて満足に給与ももらえなかった」との話が語られている。特に左翼政権下では、この「常識」に歯向かうことは反民族的であるとして、社会的抹殺を意味した。
前大統領は「民主社会のための弁護士会」(民弁)の旗振り役であり、民弁は、この問題を世に訴えることで自分たちのイメージの向上、勢力拡大、政界はじめ社会への進出を果たしてきた背景があり、その先頭にいたのが自明の事実だ。「日本企業から多くの補償を受け取れる」と主張、これを聞いて原告に加わった人も多いという。
また、慰安婦についても、日本の弁護士、女性ジャーナリストが韓国の女性人権団体の呼びかけに応じてこの問題を国際的にも広める国際法廷に持ち出して強調することを計画した。その流れで、韓国内に挺身隊問題対策協議会を設立、日本と韓国で元慰安婦のシンボルとなる女性を集めた。
市民団体や労働団体は、これらのテーマを材料にできるだけ多く、国際的にも、可能な限り長期に補助金要求を引っ張ってきた。文政権になって、そうした左派系団体には補助金がばら撒かれ、デモをすることや、国外でもデモは立像することで、マスコミに注目されて市民団体の権威は高まった。
尹政権になって、そうした市民団体の補助金に対しもメスを入れようとしている。貨物連帯のデモや労組幹部の北朝鮮のスパイ活動に対して安易に妥協することなく取り締まりを行っている。それまで政治的な発言に積極的でなかった多くの一般国民が、尹政権の姿勢を好意的に受け止めはじめた。
武藤元駐韓大使は「そうした彼らの背後には、北朝鮮がいるとの懸念がある。」と警鐘を鳴らす。韓国の「反日」を押さえ込むために最も重要なことは、尹政権が行おうとしている市民団体の取り締まりが成功することだと武藤氏は示唆する。そのための第一歩が、元徴用工の解決案に対する反対世論が大きくなり、市民団体の勢いがぶり返さないようにすることが必要である。
そのために、尹大統領が市民団体の取り締まりに成功すれば、今後ちゃぶ台返しは起きにくくなるはずだという。元徴用工問題では、尹錫悦大統領が国民から反発を受けないよう日本としても前向きに取り組むことが求められるだろう。
前述の豊璋氏によれば、韓国では左派系の声が目立っていると指摘がある、一方で、政党支持率や政権支持率を見る限り、保革は半々と考えられる。しかも、支持率が示ように、熱狂的に左派を支持しているわけではない。実際に大声を上げている左派の割合はさほど多くないというのが実感だそうである。武藤氏もそれに対し、同感だと表明する。
韓国で「NO JAPAN」の大合唱をしていた頃は、ユニクロの店頭に行くのをしぶしぶ控えて通販を利用し、日本旅行にはこっそり行ってSNSには上げないように注意していた日本好き韓国人も多い。もちろん、日本のマンガへの関心は止めようがない。
残念ながら、これまでの韓国側は一旦納得したことでも、元慰安婦や市民団体が強硬に反対し、世論が後押しをすると、前言を翻して新たな要求をしてきたのは、官民ともちゃぶ台返しをそれほど悪いことと考えていないとする意識の欠如を指摘する。
なぜ契約を簡単に反故にするのか。
「数千万円、数億円の未払いで訴えられたところで、返せないと押し通せば、民事は破産、最悪刑事としては詐欺罪で何万円か罰金を払って刑務所に半年入れば全部済む。だったら刑務所に入った方がもうかるから」という態度だそうである。ある人は出所後ソウルを出て、別の場所で同じような「仕事」をしているそうである。
だとすれば、ちゃぶ台返しをすれば如何に強い報復を受け、損失が大きいか理解させることが重要である。日韓間で国益を増進させる交流、協力を約束したのに、ちゃぶ台返しをすれば、それと同等に日本側からも反故にする、報復をするということを理解されることで重要だ。
韓国が徴用工問題に関連し、日本企業に賠償を命じた。そのタイミングで、日本は半導体素材などの戦略物資の対韓輸出を包括的許可制から個別審査に切り替えた。日本は、これは国際輸出管理レジームの問題であり、徴用工問題の報復ではないとしている。
輸出規制の厳格化は、国際輸出管理レジームの問題だということは事実である。輸出規制が厳格化されたタイミングから見て、韓国側は報復だと考えている。そのあたりは建前と本音があってもいいだろう。ちゃぶ台返しをさせないという観点からは、これは報復であると考えさせる方が得策であろう。日本はやるべき時はやる。手控える必要はない。韓国の左派・新左派などを推挙する半数がいる思考様式を踏まえた対応の方が効果的だというのが、武藤氏、豊璋氏の考えのようだ。
参照HP JB Press https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74573
https://gendai.media/articles/-/97569?page=2
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