戦後、家制度が1947年に廃止され、都市への一極集中が進んだために、田舎に放置された無縁墓が増えるようになりました。
お彼岸、お盆に墓守りに帰省しない人も増えたからです。ポータルサイト「いいお墓」が毎年行っている「お墓の消費者全国実態調査」によると、2022年に新たにお墓を購入した人が樹木葬を選んだ割合は、51.8%と過半数を超えたという。屋内のロッカーに遺骨を納める継承者不要の『納骨堂』というお墓の購入者も増えており、2022年の調査では一般墓の購入者数を納骨堂が上回りました。
管理・承継する人がいなくなったお墓は無縁墓とされます。
たとえ縁故者がいたとしても管理費の滞納や支払いの拒否などによって無縁墓となるケースもあります。家族や供養のあり方の変化から無縁墓の数は年々増加し、撤去費用などが大きな社会問題となっています。
近年は、終活がブームとなって将来無縁墓になってしまう事態を避けるため、または子孫の負担を軽減するために、お墓の整理を行う家族も増えてきました。いわゆる「墓じまい」や永代供養墓への改葬など、先祖供養の方法も多様化してきています。
永代供養は、寺院や霊園に一定期間の遺骨の安置をお願いする供養の方法です。事前に、期間が決められているうえ、撤去などにかかる費用も事前に支払っておきます。永代供養は無縁墓と同じように、お墓の管理を行う承継者がいませんが、承継者の代わりに寺院や霊園が管理を行ってくれます。
多くの霊園では、「13年」「17年」など決まった期間(年忌法要の期間に合わせることが多いようです)、骨壺に入れて埋葬し、合同墓などに合祀された後に遺骨を土に還すという方法がとられています。永代使用料が含まれている場合がほとんどですが、その埋葬方法には霊園によってさまざまです。
一般墓の価格は、2022年の調査で1基平均152.4万円かかるのに対し、樹木葬は1基平均69.6万円。ほかの人の遺骨と一緒に埋葬する『合祀墓タイプ』の樹木葬なら、5万〜20万円ほどです。
家族は墓参りをする際に、掃除をしながら墓守をします。しかし近年、実家に男子継承者がいないため、両親の夫々の墓守りがいないなどのケースが出てきています。そんな樹木葬が定義されたのは1999年。岩手県一関市にある「祥雲寺」という寺院が、樹木葬墓地として区画を分譲したのがはじまりだという。「祥雲寺の樹木葬は、山をそのまま利用し、遺骨を埋めた場所に木を植える里山タイプの墓地だったと言われています。それから20年以上かけて、樹木葬が全国に浸透した背景には、お墓の“継承問題”が深く関わっています」
樹木葬には、個別埋葬型と集合埋葬型、庭園型と里山タイプ
個別埋葬型の場合は個人のスペースを設けたり、一本の木を独占してシンボルとしたり、合祀型に比べて割高になります。相場は70万円ほどですが、高いところでは100万円ほどになる場合もあり格安とは言い難いです。夫婦・家族だけでなく個人(一人)でも入ることが可能です。納骨後、一定年数経過後はご住職により集合墓地(合祀)に移動され、永代供養されることがほとんどです。
草木や樹木を植えて墓石プレートを設置する『庭園タイプ』と、山の土に遺骨を埋葬し、墓標代わりにシンボルツリーを植える『里山タイプ』の2種類。広いスペースが確保できない都市部の霊園は庭園タイプ、郊外は里山タイプが多い。
「樹木葬の注意点は季節のギャップだけではありません。実際に納骨する際は、遺骨を砕いてパウダー状にしてから、土に還る素材の骨袋や骨壷に入れて土の中に埋葬するケースもあります。樹木葬を希望するご本人のお子さんに埋葬方法を説明すると『両親の遺骨が粉末になるのは見たくない』と、抵抗感を抱いて、反対される可能性もあるのです。また、契約内容によっては、13回忌を過ぎると共同墓に移され、不特定多数の故人と一緒に祀(まつ)られる合祀プランもあります。その情報がご遺族に共有されていないと、気づかないうちにお墓がなくなり、ショックを受けてしまうリスクもゼロではありません」
手元供養
遺骨を手元で供養するも一般的になっており、中には個人の遺骨からダイヤモンドを生成する「ダイヤモンド葬」などがあります。
自宅で災害に見舞われた場合、紛失してしまう可能性があるのと、子孫、親族に場所が分からなくなることが起きるのが難点です。
納骨堂
施設内に遺骨を納める納骨堂は天候に左右されることもなくお参りでき、自分たちで掃除する必要もありません。また、比較的アクセスのよい場所にも施設があるのでお参りがしやすく、お墓の管理が難しいという方におすすめです。かつてはお墓が決まるまでの一時的な施設として利用されてきたが、永代供養を兼ねた施設もできている。
散骨
海や山など、自然の中に遺骨を散骨するケースも増えてきています。散骨と手元供養と併用することで「散骨によって身近に手を合わす場所がなくなる」といった不安を回避できることも増えている理由のようです。
石材の代わりに耐久性の高いガラスを使った『ガラス墓』、『宇宙葬』も登場したりと、お墓の種類はさらに増えています。従来のお墓の形にとらわれず、ご本人の希望を細部までかなえられる時代になって、人の数だけ人生が存在するように、供養の形も人それぞれ墓の可能性が広がっているようだ。
参照 ダイヤモンド・オンライン