日本でLGBTへの総理秘書官のオフレコ発言が表沙汰になってマスコミに取り上げられた。それによると、同性婚制度の導入については社会が変わる、社会に与える影響が大きいとの考えを強く持っていると述べ、偏見や差別に苦しんできた当事者や識者からは、厳しい批判が相次いだ。首相秘書官は岸田政権発足時に首相秘書官に起用され、首相のスピーチライターを務めた。同期入省組の出世レースでトップを走り、将来の事務次官就任が有力視されていた。4日、更迭された。
一方で、既に同性婚が法制化されているニュージーランドでは元議員による反省の弁が話題になっている。
ニュージーランドでは2013年に同性婚を可能とする法案が可決された。その最終審議の際に「関係ない人にはただ、今まで通りの人生が続くだけ」などと述べたスピーチはこれまでも話題になっている。今回、注目されているのは、その際の法案に反対票を投じた議員によって行われたスピーチだった。自分が誤った判断をしたと認め、性的マイノリティのコミュニティに対して謝罪したのだ。
スピーチをしたのはニック・スミス元議員。引退を決め、自身の議員としての活動を振り返った演説の中盤でスミス氏は「私は過ちを犯しました」と話し始める。
「2013年、私は同性婚を可能とする法案に反対票を投じたのです。この過ちは個人的なものでもあります。私の20歳になる息子はゲイなのです」と明かし、「ニュージーランドのLGBT+コミュニティに謝罪し、議事録に残したいと思います」と述べた。
法案を提出した議員や、過去にニュージーランドにおける同性愛者らの権利獲得に動いた議員らに「敬意を表します」とした。
▼スミス元議員によるスピーチの動画。同性婚に関する発言は15分22秒から
息子「人は学ぶことができ、見方を変えることもできる」
スミス元議員は演説後、息子のローガンさんと共にニュージーランドの公共放送・TVNZのインタビューを受けている。
その中でスミス元議員は「息子のローガンは(スピーチした2021年の)3年前、ゲイであることを私に打ち明けたんです。
そのころ私はすでに、自分の考えが間違っていたと気付いていました」とし、「議員を引退する前に、公の場で謝罪をすることを息子に約束しました」と、スピーチに至る経緯を説明。
「最も重要なつながりである家族を大切にすることと、LGBTQ+コミュニティを尊重することは両立する」「私はそれが分かっていなかった」とも述べた。
息子のローガンさんは「(打ち明けたときには)父がすでに(同性愛に対する)意見を変えていることは分かっていた」と振り返り、話すことに不安はなかったとコメントし、スミス元議員のスピーチをこう評価した。
「父を本当に誇りに思います。人は学ぶことができ、見方を変えることもできるのだと示すことが重要ですから、政治や政治家、こうあってほしい」
このスピーチの動画がTwitterに投稿されると大きな話題になり、「政治や政治家とは、こうあって欲しいと強く感じる」「こういう議会を日本でも見たい」「謝罪する勇気」「素晴らしい。差別からは何も生まれない」など、反響が広がった。
日本では、今年5月に、総理のお膝元の広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が控えている。
同性婚に慎重な姿勢を示す岸田文雄首相の周囲で時代錯誤の発言が出ていては、国際社会からも指摘されるのは必至だろう。性的少数者への弾圧で知られるロシアでに、タス通信が、「(日本は)G7で同性婚を認めないただ一つの国。保守的な与党・自民党のメンバーには同性婚に反対する者が多い」と伝えた。
G7(先進7カ国)の中で日本だけが婚姻の平等やパートナーシップ法を認めていないため、英BBCは「いまだに伝統的な男女の役割分担、伝統的家族観に大きく縛られている」と指摘し、同性カップルが全国各地で婚姻の法的承認を求めて提訴している現状も紹介した。
総理の人権問題への遅れた対応であると既に国会審議にも影響をもたらしている。日本のあるべき姿勢を示すべきだとして、まずは総理もこの際に襟を正すことが求められそうだ。人権においてもガラパゴスではあってはならない。
参照、毎日新聞(2/5)つづき