多くの韓国人にとって理解できないのは、なぜこうした「サイビ宗教」が、安倍元首相をはじめとした大物政治家と関係を持ち、自民党とのパイプを築くことができたのかという点だ。とりわけ安倍氏は、日韓関係において韓国内では「有名人」だったことから、その人物の背後に「サイビ宗教」が存在したことに驚きを示す声も少なくない。
韓国では、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念された2020年2月、南部の大邱市で感染者が急増し、全国的な広がりを見せる事態となった。この原因となったのが、キリスト教系新興宗教「新天地」の集団感染だ。信者に感染者が出たにもかかわらず検査を拒否し、集団礼拝にも参加したことが発覚したが、教団側はこうした情報を公開しようとしなかった。
1984年に創設された「新天地」は、教祖を「救世主」とあがめ、韓国内に約20万人の信者を持つ。旧統一教会と同様、既存のキリスト教団体からは「異端」として排除されており、信者がのめり込んで家庭崩壊に至るなど「サイビ宗教」の典型とされている。
韓国では「新天地」が政権と癒着しているということはない。「サイビ宗教」と政界が結びつくことなど、韓国人にとっては「想像もできない話」(韓国メディアの記者)なのだ。
だが、韓国内で旧統一教会は宗教団体として認識されていない一方、別の形での存在感を示している。それが企業活動だ。=つづく
(共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)

日刊ゲンダイDIGITAL