2002年を最後に自国代表がW杯に出場できていない中国では、日本代表が健闘する度に「日本にあって中国にないもの」を巡って国民的関心があつまり、ネットでは議論が巻き起こっている。「ゼロコロナ政策」で自宅待機を余儀なくされて、無言で『白紙』を掲げながら、やんわりと自国の対応を批判し、党の政策に煽られて抗日姿勢一本槍だったのが変化しているようでもある。
例えば、中国SNSのウェイボ(微博)では「日本VSスペイン」「日本2-1スペインを逆転」「日本が3分間に2ゴール」「日本が16強進出」「森保一監督への評価が一変」などのワードが次々にトレンド入りし、日本代表への称賛や、はたまたスペインによる八百長説などまでも膨大なコメントが飛び交った。
実は、中国のサッカー熱は日本以上で、習近平氏がサッカー好きであるのが良く知られる。国家主席に就任した2010年代前半当時、最盛期の不動産企業がクラブチームを保有し、欧州や南米の著名選手、指導者を"爆買い"して強化した。現在、巨大債務を抱えて経営危機にある恒大集団の「広州恒大」はその代表格で、2013年、15年にアジアNo.1を決めるAFCチャンピオンズリーグで優勝していた。それでも、中国代表はW杯に出場できるほどには強くならず、国民のフラストレーションの種になっている。
一方、日本は地道に力をつけ、1998年のフランス大会でW杯初出場を果たした2大会に1回は決勝トーナメントに進む活躍を見せてきたので、「身体能力の違う欧州や南米の選手を真似るより、日本チームを研究すべきだ」との声が大きくなった。チームワークや機動力で戦う日本の戦術を取り入れるため、中国のクラブチームの監督が日本から招聘された。複数いる監督の筆頭には元日本代表の監督である岡田武史氏もいる。
今回、カタールで日本はドイツ、スペインと同組に入りしたため、予選突破は難しいと見られてきたが、その2代表を破りグループリーグを首位で通過した。首位通過は2002年以来20年ぶり2度目だが、日本開催だった当時とは当たった相手の格が全く違い、思いのほかの「番狂わせ」だ。
中国のSNSでは「スペインが(決勝トーナメントのことを考えて)2位で突破するために八百長したのではないか」と疑念までも湧き上がる一方、「日本のサッカーを研究し、中国の足りない部分を知るべきだ」「日本と中国の差は1世紀分に開いた」との投稿もあふれた。
「日本はドイツを模倣し続け、ついに追い抜いた」との投稿には「日本が学んだのはブラジルサッカーのはずだ」など、"源流"を巡っての議論までもが”沸騰”した。
中国代表のていたらくもあり、全体としては日本を「アジアの代表チーム」として応援する投稿が多く見られた。「アフリカや欧米の選手に劣らないと証明してほしい」「4強を期待する」と望む声もあった。試合が進むにつれ日本代表メンバーの知名度も上がり、6日未明に行われたクロアチア戦では、「森保一監督がまたメモを取る」もトレンド入り。日本が敗退すると、「森保監督は、日本に帰ってPKの練習をする」とメモしただろうとの投稿も増えた。自国の政策のうっぷんを出せないこの所をサムライブルーの躍進を挙げて、日本チームへの好意的な表現をして体制批判をやんわりしているのかもしれない。
出典 Jcastニュース(浦上早苗の「試験に出ない中国事情」より転載、12/7)