国連によると、世界の人口は15日(日本時間)にも80億人に達する見通しだ。国連は1日に公表した報告書で人口爆発によって温室効果ガスの排出量が急増し、気温上昇による異常気象や食糧不足に見舞われると警鐘を鳴らしている。報告書によると1950年に約25億人だった人口は70年代に40億人、2011年に70億人と推移し、現在までに3倍以上となった。
アジア圏が約44億人で55%に上り、中国とインドの2か国(約28億人)だけで全体の35%を占める。インドは来年、中国を抜き、世界最多となる見通しだ。
37年頃に90億人、58年頃に100億人を突破し、その後は、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子ども数の推計値)の低下などによって、ほぼ横ばいとなる見込みだ。
■島のみ込む海
国連は報告書で人口の急速な増加が「地球温暖化や気候変動など様々な環境劣化を引き起こしている」と指摘し、「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」と警鐘を鳴らした。
化石燃料の使用などによる二酸化炭素(CO2)の排出量は過去半世紀で倍増した一方、1990年以降、日本の国土の11倍超にあたる面積の森林が消失した。
温暖化の影響として「小さな島国が海面上昇の危機に直面している」と指摘。南太平洋の島国ツバルのナタノ首相は8日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で「温暖化する海が我々の土地をのみ込み始めている」と訴え、各国に化石燃料の廃止を求めた。
海面は今世紀末で最大55センチ上昇するとの予測もある。平均海抜約2メートルのツバルでは国土消失の危機に直面している。インド洋の島国モルディブも国土の大半が水没する恐れがあり、人工島への住民移住を進めている。
■食糧不足
食糧問題も深刻な課題だ。報告書は「人口の増加が見込まれる多くの国が低所得国だ」と指摘し、「飢餓」が増える可能性を指摘した。特にアフリカは、現在の約13億人から約25億人に倍増すると予測される。アフリカではすでに気候変動による干ばつに加え、ロシアのウクライナ侵略による穀物価格の急騰に直面しているが、今後は一層厳しい状況に置かれそうだ。
国連世界食糧計画(WFP)によると昨年、アフリカ諸国を中心に約8億2800万人が飢餓状態となった。特に南スーダンは来年、国民の3分の2にあたる780万人に命の危険が迫る「深刻な飢餓状態」に直面する恐れがあるという。
国連は報告書で、先進国が低所得国に対し、「技術協力や資金援助」する必要性を訴えている。
出典 読売新聞(11/14)