WHOのテドロス事務局長は、14日、パンデミックを宣言した2020年3月以来、1週間に報告された死者数が最も少なくなったことを根拠として挙げ「パンデミックを終わらせるために、過去にないほどいい状況になってきた。まだたどり着いていないが、終わりが視野に入ってきた」と述べた。
一方で、ただ、依然として今年だけでも100万人超の死者が出ている。「ゴールが見えたからといって走るのをやめるマラソン選手はいない」として、新たな変異株の発生や死者の増加を招くとも強調し、重症化の危険が高い人へのワクチン接種率を100%にするなどの対策を緩めないよう呼びかけた。
新型コロナは中国・武漢市で20年1月に大規模な集団感染が確認され、その後世界中に広まった。英オックスフォード大学の研究者らでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、これまでに世界で6億人以上が感染し、650万人以上が死亡しているとみられる。
現在世界で広がっている変異型「オミクロン型」は、従来型より感染力が高いが毒性が低くなっているとの研究が相次いでいる。世界で7割近くの人が少なくとも1回ワクチン接種を受けたこともあり、重症者や死者数は減る傾向にある。
東京医科大学の濱田篤郎特任教授は海外の感染症に詳しい立場から、「WHOは次の感染の波が冬に来ると言っていて、WHOの言う『終わり』は流行の終息ではなく、コロナと共存できる社会が見えてきたという意味ではないか」と話しています。今回の記者会見でもWHOはパンデミックを終わらせるためには、今後も、ワクチン接種の推進や、感染状況の監視と検査の実施、治療体制の整備と維持、政策を丁寧に説明するコミュニケーションなど、6つの点については、すべての国に求められているとしていて、濱田特任教授はこの点を重視すべきだと指摘しました。
濱田特任教授は「コロナと共存するという意味でのゴールが見えてきたので、それに近づくための対策を実施してほしいということだろう。コロナ対策が長く続き、世界中の人たちの間で『もうそろそろいいんじゃないか』という気持ちが出ている。そのような時期だからこそ、もう少し頑張ろうというメッセージを示したのではないか」と述べました。
そのうえで「コロナの流行の終息を早期に目指すことは難しいと思うが、コロナに感染しても対策できる社会は実現可能だ。ワクチン接種で免疫をつけながら、抗ウイルス薬を使って治療できる体制を整えることが大切だ」と強調しました。
出典 NHK新型コロナウイルス特設サイト、日経新聞(9/15)