米疾病対策センター(CDC)は米人口の6割が新型コロナウイルスに感染したと推定する報告書を公表しました。11歳以下は8割近くが感染したと推定。足元では新規感染者数がじわりと増加しているものの、バイデン政権のファウチ首席医療顧問は「米国はパンデミック(世界的な大流行)の段階から脱した」と発表しました。バイデン米大統領も、14日に収録(18日放映)の米CBSテレビのインタビューで、米国の新型コロナウイルス感染症を巡り「パンデミック(大流行)は終わった」と述べ、さらに「だれもマスクを着けていないし、みんな体調は良さそうだ」と述べた。一方で、バイデン氏は「新型コロナウイルスは問題であり続けており、まだやるべきことはたくさんある」としつつ「状況は変わっている」と強調した。
米国では重症化を抑えるワクチンや治療薬が普及したことを受けて、疾病対策センター(CDC)は感染者と接触した人の隔離を一律不要とするなど、コロナ対策を大幅に緩和している。
ファウチ氏は4月26日の米公共放送PBS番組で、報告書に関し「感染した人とワクチンを接種した人を合わせると、かなりの米国民がある程度の免疫を獲得している」と指摘した。「ウイルスを根絶することはできないだろうが、米国はパンデミックの段階から脱した」とも話しました。
これまでの研究で、HIV・マラリア・ノロウイルスといった病原体に対して「感染をほとんど防ぐことが可能な遺伝子」が存在することが分かってきました。ウイルス感染に対する遺伝的耐性は多くの人に見られるものではないものの、そういう現象があるという事実から、新型コロナウイルスにさらされても感染しなかった人々の遺伝子変異が注目されることになってきました。
例えば、HIVは白血球の表面に存在するCCR5と呼ばれるタンパク質を受容体として人間に感染しますが、このCCR5を産生する遺伝子に変異が生じている人はCCR5の立体構造が変化するためHIVに感染しません。このCCR5産生遺伝子の変異を利用してエイズを治療する試みが行われており、実際に「HIVウイルスがほぼ消滅した」とする成功例も報告されています。
「ウイルスの受容体の構造を変化させる遺伝的変異」が新型コロナウイルスに関しても存在する可能性があるとして、2021年10月から国際的な研究チームによる遺伝子探索が始まっています。この研究が進めば、将来的に新型コロナウイルスに感染しない手法が開発される可能性があります。
一部の人は、免疫系が強く、ウイルスが体内で複製するのを阻止するI型インターフェロンという抗ウイルスタンパク質を産生しているのかもしれない。I型インターフェロンは体の最初の防御線で、ウイルスに対する抗体ができる前から現れる。
もう1つの仮説として、以前、ふつうの風邪を引き起こすコロナウイルスに遭遇した際にできたメモリーT細胞という免疫細胞が、新型コロナ感染を抑えるのに役立った可能性もある。
ワクチン接種が始まる前の2020年に行われた研究で、新型コロナウイルスにさらされたが発症しなかった医療従事者は、メモリーT細胞を多くもっていたことが判明している。
体内にあるメモリーT細胞が、新型コロナウイルスを速やかに除去したという人も、中にはいるのかもしれない。しかし、こうした人々が将来も感染から確実に身を守られる保証はない。英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジのウイルス免疫学者で論文共著者の1人であるマーラ・マイニ氏は、「一部の人は、その後、より感染力の強い変異株や、より多くのウイルスにさらされて、感染したことが分かっています」と言う。
出典 Livedoor news(3/3) 日経新聞(4/28、5/3)
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