田中真澄 『心が迷ったとき読む本』PHP研究所
私たちのほとんどが凡人ということになっている、そして、凡人だから秀才には勝てないと思い込んでいる。
たしかに学校での受験勉強では、凡人は秀才には勝てないのが常識である。
しかし、この常識はあくまで学校内のことでしかない。
社会生活においては、学業成績だけが人生を左右する決め手ではない。
いや、むしろ学校で勉強ができたことが仇になって、かえって失敗していく人も少なくない。
なぜなのだろうか。その答えは、凡人でありながら成功の人生を歩んだ人を研究するとわかる。
その 研究対象でもっとも参考になる人物が、松下幸之助氏である。ハーバード大学教授のジョン・P・コッター氏は、著書『幸之助論』(金井壽宏監訳、高橋啓訳、ダイヤモンド社)で、松下幸之助氏の少年期を評して、次のように記している。
「幸之助を並み以上の才能を持つ人物と見なす人はほとんどいなかった。彼は凡庸の少年だった」
その平凡な少年が大成功を手にした決め手について、同書の最後で「彼ならこのように言うだろう。家柄が良いとか、東京大学出身(あるいはハーバードでも オックスフォードでもいい)であることはすばらしいことだが、それはなんら本質的なことではない。これと同じことは、抜群の知性、優れた容姿、豊かな個性についても当てはまる。この種の要素よりも重要なことは、信念と、それを支える理想なのだ」
松下幸之助氏は生涯学びつづけた人である。その継続実行を支えたのは、氏の強烈な信念であり、将来に対する燃えるような理想であったのである。凡人の唯一の武器は、コツコツと長い時間をかけ続けることである。一度に大きなことはできないが、 小さなことをすこしずつ積み上げていくことなら凡人でもできる。それは、女だから出来ないと思い込んで、やらないで諦める人にも似ている。勝負をしないなら、それでもいいが、人生を賭ける生き方も、時間をかければいいのだから、逆に余命の長い女性には利点がある。
《凡人が秀才 に勝つためには、強い信念とそれを支える理想を抱きながら、コツコツと努力を重ねていくことである 。》