オートファジー (Autophagy) は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。2016年に東京工業大学の大隅良典栄誉教授が仕組みを解明し、ノーベル医学生理学賞を受けたことでも知られる。現代人の多くは「1日3食」が当たり前だが、「空腹」の時間をつくる、「空腹の16時間」の理解をしておくことも重要なのだそう。
加齢とともに消化機能の働きは悪くなっていく。前日の夜21時に夕食をとって、朝食を抜く1日2食の食生活にするなどして、食事と食事の間に16時間空けることで、『オート・ファジー』と呼ばれる細胞の“リサイクル化”が起きます。古いタンパク質を除去して新しく作り直すため、免疫機能が高まるほか腸内環境も整うため、便秘なども改善されるという。
「空腹力」に着目した青木院長(あおき内科さいたま糖尿病クリニック)は10年前に舌がんになったのを機に、オートファジーを実践しているのが、睡眠時間の前後に空腹の時間を組み込む食事法を実践した。例えば、夜8時ごろ夕食を取り、睡眠を挟んで次の食事は翌日正午ごろ。今では疲れ知らずになっただけでなく、ダイエット効果もあったという。
カギとなるのが飢餓状態に陥ると活性化する「オートファジー」だ。オートファジーは「自食作用」とも呼ばれ、細胞内の新陳代謝の仕組みで人体の古くなった細胞を新しく生まれ変わらせるシステムのこと。空腹時間をつくると、「ケトン体」と呼ばれる物質が増加する。ケトン体には、酸化ストレスから神経細胞を保護する作用もあるという。
この疲労回復法のメリットは、「朝食抜き」「昼食抜き」「夕食抜き」と、自分の生活スタイルにあわせてできることだ。とはいえ16時間何も食べないのは苦行に近い。しかし安心を。青木院長によれば、おなかが空いたら低糖質で塩分も少ないナッツ類なら食べてもよく、水やコーヒー、酵素ドリンクでもゼロカロリーに近ければOKだ。どうも、イスラムの断食習慣:ラマダンに似た原理だ。
気をつけるべき点は、長く続けていると、筋肉を燃やしてエネルギーを得ようとするため、筋肉量が減ることだ。もう一点は、持病があったり、薬を処方されたりしている人は医師に相談すること。ですから筋トレは必要ですが、「階段の上り下りや腕立て伏せ、腹筋などで構いません」ということです。
「できる範囲からで大丈夫。12時間から始めても、週に1度から始めてもいいでしょう」
鶏むね肉に空腹力──。これまでの常識を見直す必要があるかもしれない。自分に合ったスタイルを見つけ、疲れ知らずの体をつくろう。
参照:AERA(編集部) 2020年3月30日号