欧州で新型コロナウイルスの感染が急激に広がっている。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「感染者の津波を引き起こしていることを強く懸念する」と述べた。
イタリアは29日に新規感染者数が約9万8千人に達し、過去最悪を更新した。英国やスペイン、ポルトガルなどでも同様に最悪の状態だ。英国の入院患者数は1万人を超え、今年3月以降では最も多いという。
フランスでは25日の発表で、新規感染者が初めて10万人を突破したばかり。主流のデルタ株に加え、オミクロン株の感染が急拡大、29日時点で初めて20万人を突破し、1日の感染者数は約20万8千人となった。28日に過去最悪の約17万9800人を記録したばかりだったが、4日間で倍増し、過去最多の記録となった。これまで、コロナ感染者は英国が最多だったが、フランスが上回り、1日あたりの感染者数が20万人を超え、欧州では過去最悪の記録だという。年末年始の帰省を前に、感染検査をする人が急増したのも一因とみられる。
フランスメディアによると、ベラン保健相は「1秒に2人が陽性になっている」と語った。陽性者数は100万人を超え、国民の1割が濃厚接触者に該当し、「めまいがするような」(ベラン氏)増加となっている。全土では来月3日以降、カフェやバーで立ったままでの飲食を禁じたり、長距離列車や映画館内での飲食も禁止したりする。ワクチンの追加接種の間隔も1カ月前倒しし、3カ月に短縮するなど対策を急ぐ。だが、感染拡大に追いついていない。
ベラン氏は29日の国会で「(変異株の)オミクロンは波ではなく、大きなうねりと呼ぶべきだ。ここ数日の数字を見れば、地滑りだ」。
今夏、オリ・パラ会場を無観客で運営した日本をしり目に、次の開催地であるパリでは、陽光の下、マスクを外した大勢の市民が、トリコロールカラーの空中ショーを見上げ、肩を組むいつもの夏以上に解放された感の市民の様子が日本と好対照だったのが印象的だった。英国では、ロンドンの繁華街で市民はすでにノーマスクでコンサート、スポーツ観戦に大勢が集っていたのにも、日本人としては驚いたが、子どもを除く一般市民は99%外でマスクを外さなかった。ところが、今、感染が深刻だとして、パリ警視庁は29日、屋外でのマスク着用を31日から義務づけると決めた。どちらが、賢く、どちらが早とちりというのでもないが、マスクに関していえば相当の効果が実証されたようだ。
日本では、二度目のコロナ禍での年末年始となる。昨年はGotoの足も止まり、初詣も自粛だった。
本年は、東京駅を出発する東海道新幹線「のぞみ」の午前中の自由席の乗車率は最大で110%、JR東日本によると、東北・山形新幹線「つばさ」は100%となっていた。帰省の流れは各高速道にラッシュの波を作った。一年経って年末の状況から考えると、ウイズコロナの時代にマスクはしていたほうが、結果、ストレスは少ない事のようだ。やってみての結果なので、インフルエンザに罹りにくくする過程と一緒である。
いずれ、年末の人の大移動の影響で感染者数の上昇傾向は起きてくると思われる。欧米の事態にならぬように、これまで通りの感染予防、換気を心掛け、各自で免疫を落とさない節度ある生活を維持して、七草明けも微増にとどまってもらいたい。
参照:朝日新聞(12/30)