英国でCOP26が開かれ、脱炭素社会実現を迫られる中、日本も再エネ導入の加速化が急務だ。
全国の地熱発電所の数が、11年の福島第1原発事故後のおよそ10年間で、4倍に増えたことが6日、火力原子力発電技術協会の統計から分かった。 統計によると、10年度は20基だった発電所は、19年度に92基に急増した。
豊富な地下資源を抱えながら開発が停滞していたが、再生可能エネルギーとして再び注目され、建設が進んだ。ただ小規模発電所が多く、全体の発電量は伸び悩んでいる。火力や原発に比べ総発電量に占める地熱の割合は極めて小さく、30年までに発電所数を倍増する目標を掲げた。
出典:共同通信(11/6)
ところで、再生可能エネルギーとは、自然エネルギーやバイオマスなど、自然界に常に存在するエネルギーのこと。環境負荷が小さく、枯渇の心配がなく、また二酸化炭素の排出がないというのが、特徴だ。しかし、「大きな設備が必要であること」「天候などに左右されるため供給が不安定で、需要に合わせて発電できないこと」「発電コストが割高であること」などの短所もある。
日本における再生可能エネルギーは法的に種類が規定されており、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱・その他の自然界に存在する熱、バイオマスの7つとなっている。この中で、水力発電量は単独で統計に示されることが多く、再生可能エネルギー統計に含まれないことがある。EIA(アメリカ合衆国エネルギー情報局)の統計によると、日本の再生可能エネルギー(水力発電は含まない)による発電量は中国、アメリカ、ドイツ、インドについで世界第5位(2018年)。総発電量に占める割合は約14%であり、なかでも「太陽光発電」比率が6.36%と最も高い。次いで「バイオマス・廃棄物発電」比率が4.49%となっている。
日本で太陽光発電の普及が進んだのは国の政策が大きい。ソーラーシステム普及促進融資制度(1980〜1996年)やFIT(固定価格買取制度・2012年〜)の2つの影響が大きい。
かつて日本には、1973年の第一次オイルショックをきっかけに新エネルギーの技術研究開発を進める「サンシャイン計画」(1974〜2000年)があった。サンシャイン計画が始まった当初は、太陽電池の製造コストは1w当たり数万円もかかっていました。現在では数百円程度になり、太陽電池の技術が一般化していき、2012年に固定価格買取制度が始まると、太陽光発電の普及が一気に進んだのだ。
日本の太陽光発電量(TWh)は、2011年は4.84でしたが、2012年には6.61、2018年には62.67となっている。
太陽光発電を行うには日照時間が長いほうが有利だ。そのため、日本海側のように冬に大陸からのモンスーンの影響を受けて降水量が多くなる地域や日本列島北部は太陽光発電を行うには不利な地域である。結果、日本の太陽光発電量は太平洋側の県で多くなっている。また山梨県や長野県、群馬県といった内陸で年降水量が少ない県も多い。
日本は化石燃料に乏しい国なので、石油や石炭、天然ガスといったエネルギー資源の安定供給、原子力発電の積極的な開発と運用を進めてきた。しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに、原子力発電事業は見直しを迫られ、再生可能エネルギーが期待されている。
そこで、先述の固定価格買取制度によって太陽光発電を普及させました。買取価格の規定額は年々下落傾向にありますが、太陽光発電の設置コストも下がってきており、特に環境問題の解決策としてクリーンエネルギーである太陽光発電は今後も普及が進むだろうと考えられている。これはSDGsで示された目標にも合致するからだ。
もちろん夜は発電できないので、太陽光発電システムと蓄電システムのセット販売が増えるでしょう。将来的には、電気の自給自足が可能になる時代がくるのかもしれない。
日本では、バイオマスによる発電量も増えていた。バイオマスとは、家畜排泄物やパルプ廃材、古紙などの「廃棄物系」、農作物や林地残材(建築用材などに利用できない残材)などの「未利用系」、糖質資源(サトウキビなど)や油脂資源(菜種など)やデンプン資源などの「資源作物」を指す。これらの利用は省エネ、エネルギーの地産地消を実現する有効な手段だ。太陽光発電と同様に、2012年の固定価格買取制度の始まりによってバイオマス発電も拡大した。
これまでバイオマスについてはカーボンニュートラルであると認識されてきました。しかし、実際にはアブラヤシなどの燃料の生産・輸送などで化石燃料が使われるため、その際に温室効果ガスが排出が懸念材料だ。よってバイオマス発電が必ずしも環境負荷を小さくするとは言いきれえない。そのため「バイオマス発電は固定価格買取制度の支援材料として不適切ではないか」という意見も出てきた。今後は、各地域で出た廃棄物を利用することが重要となってくる。
日本列島は環太平洋造山帯に位置していることもあり、4つのプレートが集合して地震や火山が多い国です。こうした背景から、日本が保有する地熱資源量は、アメリカ、インドネシアに次いで世界3位を誇ります。しかし、わずか2%しか活用されていません。
これは一般に、1960年代後半から環境庁(当時)の通達で、自然公園内の地熱は既存の発電所以外の開発を推進しないこと、当時は原子力発電を推進していたこと、また温泉事業者からの慎重論があることなどが背景にありました。このように地熱発電は開発が進まず、そして人材育成も進んでいない状況だった。
(本稿は『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載)
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