気が散ることのない環境として「理想的なのは、静かで喧騒とは無縁の場所」がいいといわれます。
気が散る最悪のものに、コンピュターや携帯電話が出してくる通知がある。
人はその通知をどうしてもチェックする習慣性ができてくるからだ。
ある研究によれば、人は、メッセージ受信用アプリケーションを走らせたままにしている場合、平均で35秒ごとにメッセージをチェックするという。ある人がアクセスしているどうでもよいウェブサイトが1週間にわたってブロックされたとき、仕事により深く没頭するようになり、生産性が向上したという。であれば、持っている機器の通知設定を外して、遮断モードが役に立つかもしれない。
多くの人が知らぬ間にスマホを少しでも忘れようものなら急に不安になったり、パニックに襲われたりする「携帯電話依存症」になっているといえる状況になっています。
そこで、ラトガーズ・ビジネススクールのサンゴーン・カンとテリー・クルツバーグ両教授の研究によって、携帯電話をいじると、携帯電話にまったく触れずに休憩時間を過ごすのと比較して、頭脳の回復が効果的におこなわれないことが明らかになった。
あることをしているあいだにも、しょっちゅう携帯電話をチェックするというようになると時間とエネルギーが失われていく。
「人々の携帯電話中毒がますますひどくなっているのだから、時間を見つけては自分の携帯電話に手を伸ばすたびに、意図しないコストが生まれている事実を認識することが大切だ。人々は、携帯電話だけが特別ではない、人とのやりとりや休憩といった類のものと同じだと考えてはいるのかもしれないが、この研究は、携帯電話が予想以上に知的活動にとってや厄介至極なしろものかもしれないことを教えてくれている」
学習するときに、脇に携帯電話を置いておくだけでも、邪魔になる。なぜなら、そばにあるとわかっていると、頭はその携帯電話をずっと意識し続けるからだ。電話がなくて落ち着かないと感じる状態になっているなら、やはり手の届かないところに置くほうがよいと研究者は考えている。自分の携帯電話を身に付けず、バックパックやブリーフケース、クルマやオフィスに置いておくだけで、自分の集中力がいかに高まるのか、驚かされることになるはずだ。これらは“スイッチング・コスト”と呼ばれている。
たとえば、ミシガン大学の研究者がおこなった研究によると、知的な活動の成績は、被験者がひとつの課題を達成しないうちに次の課題にスイッチする行動をとった場合、30パーセントから40パーセント低下するという。
バーバラ・オークレー&オラフ・シーヴェ『学び方の学び方』アチーブメント出版
集中力を高めるポモドーロ・テクニックは1980年代にイタリア人のフランチェスコ・シリロが考案した(この名称は丸いトマトの形状をしたキッチンタイマーからつけられている。ポモドーロとはイタリア語でトマトのことだ)。この手法は間違いなく集中力を高めてくれるだろうし、それは研究からも明らかになっている。
1. 勉強する、あるいは仕事をしようとする場所に腰を下ろし、邪魔になりそうなものを排除する。
2. タイマーを25分に設定する。設定した25分間、できる限り徹底して勉強や仕事に没入する。
もし、気が散っても目の前の対象に意識を戻そう。たいていのものは、25分間手を付けなくてもすむし、先延ばししてもよいものだ。もしそのほうに手を付けなければという思いが強くなって気が散ったら、それをポモドーロの時間が終わった後でする“必須”リストに書いておこう。
3.ポモドーロの時間が終わったら、約5分間の褒美の時間をとろう。
好きな歌を聴いてもよいし、お茶を入れてオヤツを食べる、犬や猫を抱いてかわいがる、目を閉じてリラックスする、散歩をする、などなど、なんでも自分の気持ちを自由に穏やかにしてくれる、そんな褒美の時だ。その休憩時間は、携帯電話や電子メールのチェックを忘れてしまえる瞬間だ。
4.忠実にこの習慣を繰り返す。
もし、2時間勉強したいと思ったら、毎回5分の休憩を入れてポモドーロを4回繰り返せばよい。もしその休憩が終わっても勉強に戻る気になれなかったら、休憩専用のタイマーも別に設定することだ。
このようにスイッチング・コストによって時間とエネルギーが失われることで、本来のタスクの取り組みを避けたいと思うようになる。これがポモドーロ・テクニックとの不思議な関係だ。つまり、本来のタスクを達成するのを邪魔するものにわずらわされることなく、“ひとつ”の課題に集中できるには、どうすればいいのかの意思を働かせるのに気づく事だ。
しかも、こうしたデジタル関連商品は、買うのに相当な費用がかかり、取扱説明書を保管したり、その上、充電したり、カバンに入れて持っていくものが増えて重くなったりします。1日に10分、そうした作業が発生すると年間60時間、30年で75日分の時間が奪われます。その時間を使ってできたはずのことができなくなります。
つづき