1996〜2012年の間のZ世代と併せて、韓国では1981〜1995年の間に生まれたミレニアル世代とを「MZ世代」としばしば呼ぶことがある。日本ではあまり知られていないが、MZ世代の反中感情は反日感情を上回る。
韓国の全国教職員労働組合に所属する教師は、民族主義を強調した歴史教育と親北朝鮮、反日運動を積極的に行っている。小中高校生は、左派性向のこうした一部の教師から反日思想教育を受けている。与党は反日感情を選挙戦略の道具として活用、2019年7月初め、政府与党の政治家が反日運動に火をつけたことで、すぐさま日本製品不買運動が始まった。左派政党、労働組合、市民団体が「ノージャパン、ノーアベ」のステッカーをばら撒いて反日運動を主導したのだ。翌2020年4月に実施された総選挙では史上最大の圧勝につながった。
ところが、今では特にMZ世代で反日よりも反中である。反中感情は様々な要因で蓄積し、表出している。
中国は過去の中華思想に基づいて再び世界の中心になるという野望を持つが、それがコロナ禍によって、中国共産党の統治体制のもとに広げられて、イタリアの繊維産業のみならず世界の各地に入り込んできていることに気づかされた。人々に反中感情を呼び起こしている。特に、韓国のMZ世代の反中感情は、与党が主導した反日感情をはるかに越えて深まっている。
反中感情はMZ世代に限らずどの世代でも高い。関連する2つの世論調査を紹介したい。
一つ目は、6月25日に国民日報が実施したオンラインアンケート調査だ。この調査によると、韓国のMZ世代が最も嫌っている国は中国で、51.7%を占めた。中でも、1990年代半ばから2000年代初めに生まれたZ世代は、回答者の60.3%が最も嫌いな国として中国を挙げている。日本が嫌いと答えたMZ世代は31.2%に過ぎない。
二つ目は、週刊誌「時事IN」の世論調査である。全国18歳以上の男女57万人を対象に行われた広範囲なアンケート調査(5月)。この調査では、中国に対して「非常に否定的」(49.3%)と「やや否定的」(26.6%)が75.9%を占め、中国共産党を否定的に捉える人も81.1%に上っていた。
昨年3月、「朝鮮求馬師」という全16話Vドラマが論争となり、わずか2回を放映した後、打ち切りになった。主に若い世代を狙ったファンタジー時代劇ドラマである。このドラマ放映が中止になったのは、登場人物の衣装、食べ物などの何から何まで中国式の時代劇に視聴者の抗議が殺到した。文在寅政権は発足直後から露骨な親中政策を展開してきたが、任期末期に近づき、正反対の現象が起きている。中でも、MZ世代の中国に対する非好感度は日本に対する非好感度よりはるかに高い。
日本海に面する韓国・江原道に大規模なチャイナタウンを建設する計画があったが、反中感情の悪化で、中止に追い込まれた。文政権は4年以上にわたって親中路線を推し進めたが、世論の反中感情はむしろ強くなった。文政権の中国に対する低姿勢と中国共産党の政治体制、中国人に対する国民の不信が高まっている。
文在寅大統領は2017年5月の就任後、露骨な親中政策の演説など、習近平中国国家主席の訪韓に力を入れているが、就任から4年が経過したいまだ実現していない。政治家の従属姿勢を見苦しく感じる韓国人は少なくないが、当の与党政治家は意に介さない。
6月21日には、韓国に居住する一部の朝鮮族(中国籍の韓国・朝鮮系民族)の団体が中国共産党結成100周年を記念するイベントを開催した。イベントの様子は「中国同胞TVユーチューブ」で公開されて知れ渡ったが、韓国の永住権を取得し、経済活動や健康保険、多文化政策による福祉などの恩恵を享受しながら、中国共産党に忠誠を誓う朝鮮族の姿に、韓国人は驚きと憤りを露わにした。
中国・武漢発の新型コロナのパンデミックが起きたことで、中国に対する不満が爆発した。もともと韓国人は中国から飛来する黄砂や粒子状物質によって、健康上の脅威を受けていると考えていた。それが、コロナ禍によって、特にMZ世代に影響が大きく将来不安が増大したのがである。香港に対する中国共産党の対応も、嫌悪感に拍車をかけた。
中国は海外において、その国の大学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び紹介、中国との友好関係醸成を目的とする中国語教育を提供するは孔子学院(孔子アカデミー)プロジェクトを広げている。2005年の立命館孔子学院開設を皮切りとして、日本にも17校が存在する。人口が日本の半分ほどの韓国にも23校(学院1校、22校は大学内に設立)の孔子学院と、韓国の中高校41校に設立された孔子学堂がある。表面的には孔子思想や中国文化、中国語を教える場所だが、その実、毛沢東思想を教える中国共産党の宣伝機関である。また、韓国内の各大学に中国人留学生が日増しに増え、中国人留学生が1000人を超える大学が韓国には計17校に上るようになった。中国人留学生がいない大学は、運営が難しいという話が出るほどだ。
中国の検索サイト大手「百度」には、韓国人が憤る情報が掲載されている。扇子舞いやアリランなど韓国の伝統文化を朝鮮族の文化と記載し、キム・ヨンアや世宗大王も朝鮮族だと書いている。つまり、かつて同様に韓国を中国の属国と見る考えが存在しているのだ。そうなってくると韓国の伝統文化である韓服、キムチ、パンソリ(朝鮮の民俗芸能)からオンドルまで中国固有の文化と主張するようなことも起こり、MZ世代はことに憤慨し、反中感情には文化的な要素も作用しているのだ。
出典:JP Press(7/25)