「第四次産業革命と教育の未来」を出版した東大名誉教授の佐藤学さんに 「ICT(情報通信技術)教育」は、本当にいいことなのか聞いた。
この春、全国のほとんどの小中学校に「1人1台」分のデジタル端末が配られた。実は、日本の子どもが授業でコンピューターを使う時間は、先進国の中で最低レベルだ。一方で、学校での使用時間が長いほど、成績が下がるという報告もある。
――一方で、2018年のPISAテストで日本の子どもの読解力の順位が8位から15位に落ちた際は、「デジタルの情報を読む力が不足しているからだ」と指摘されました。
「デジタル教育の遅れが指摘される前のことですから、それは、根拠がない指摘だと思います。読解力自体が落ちてきたと言えそうです。」
――我が家の小学生の子どもにもiPadが配られましたが、学校での使い方を聞くと、鉛筆で書けばいいことをキーボードで入力したり、知育ゲームのようなアプリだったり。本当に必要なのかと思ってしまいます。
「実は、ICT教育によって学力が上がるという研究結果はほとんどありません。IT企業が宣伝用に使っている小規模な調査データはありますが、『未来の教育はICTだ』というイメージが先行しているのが現状です。一番信頼できるデータは、国際学習到達度調査(PISA)の調査委員会が2015年にまとめた報告書です。学校でパソコンを全く使わないよりは、適度に使った生徒の方が成績はいいのです。しかし、使う時間が長くなればなるほど読解力も数学の学力の点数も下がっていく弊害がみられます。」
PISAテストを中心的に担ってきたOECD(経済協力開発機構)のアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、コンピューターは情報や知識の獲得や、浅い理解には有効だが、その知識や情報を活用する深い思考や探究的な学びにはつながらないと解釈しています。
出典:朝日新聞(5/27)