■21日の判決の判決要旨
国際司法裁判所(ICJ)はこれまで、国家は外国の裁判権に服さないという主権免除は認められるべきだと判断してきた。
慰安婦問題をめぐる2015年の韓日(日韓)合意は、元慰安婦らの被害回復に向け、被告(日本)政府レベルの措置を内容としたもので、被害者らの代替的な権利救済手段を用意するためのものとみるべきだ。合意には、日本政府レベルの謝罪や反省が盛り込まれ、元慰安婦の被害回復に向け、日本政府が資金を拠出した財団も設立された。合意は、被害者らの意見が集約されていないなどの問題はあるものの、存命被害者の相当数が財団からの現金支援を受け取っており、被害者らの意思に反したとは断言しづらい。
政府は財団の設立許可を取り消す否定的態度をとったが、外相が「公式な合意」と認め、再交渉を求めない意思を明らかにした。財団解散で残った資産を日本に返還するなど、合意の破棄を前提とした措置は行われなかった。
国際慣習法と異なり、日本に対する主権免除を否定すれば、判決後の強制執行などで日本との外交関係の衝突が不可避だ。被害者らへの「深刻な人権侵害」などを理由に主権免除の例外とすることは、今後の主権免除の範囲について、相当な不確実性を招かざるを得ない。
日本に主権免除を認めることは、韓日間の合意を尊重し、さらなる外交的交渉を円滑にするためであり、一方的に原告らに不利な結果を強いるものではない。主権免除の趣旨は、国内の裁判所で外国を相手に訴えた場合に生じ得る外交的衝突や混乱を防止し、外交的交渉による解決を円滑にするためのものだ。
15年の合意が現在も有効に存在しており、国内法と合わないからと、主権免除を否定することは妥当とはみなしがたい。日本への主権免除を認めることは、国際法を尊重するために私益と公益のバランスを失わせるものとも考えにくい。
主権免除自体が憲法違反だとみなしがたい。国際慣習法や最高裁の判例に従えば、外国を被告とし、その主権的行為に対する損害賠償請求をすることは認められない。
この訴えを却下する。

■1月の確定判決に関する決定
(訴訟費用について)日本政府の負担はないことを確認する。
本件は日本政府の主権免除を認めず、原告勝訴判決が確定した。
しかし、外国に対する(資産差し押さえなどの)強制執行は対象国の主権と権威を損なう恐れがあり、慎重なアプローチが必要だ。訴訟費用を強制執行することになれば、国際法に違反する結果をもたらしうる。外国政府の財産に対する強制執行は現代文明において国家の威信に関わることであり、強行すればわが国の司法の信頼を損なうなど、重大な結果につながりかねない。
今回の訴訟は記録に残されたすべての資料を見ても、国連の主権免除条約上の要件を満たしていない。日本政府の財産(の差し押さえ)が強制執行されれば、憲法上の国家の安全保障、秩序維持、公共の福祉に相反する結果を招く。
(国際条約によれば)どの国家も条約を履行しないことを正当化する理由として、司法府の判決など一切の国内事情を挙げてはならない。国内では憲法に違反し無効になる内容であっても、特別な事情がない限り、韓国は条約を順守する義務がある。最近も日韓政府は(2015年慰安婦)合意の有効性を確認した。
出典:産経新聞(4/21)
つづき