橋下徹&堀江貴文『生き方革命』(徳間書店)
いまの日本には、社会全体に沈滞の空気が漂っており、誰もがそれを多かれ少なかれ感じているのではないだろうか。海外に目を転じてみると、日本以外の先進国では実質賃金が上がり続けている。
日本で上がらないのは、賃金だけではない。日本企業の株価は、回復してきているとは言え、1989年の最高値3万8915円を一度も上回っていない。一方、アメリカはと言えば、約40年間で株価は30倍以上にもなっている。30年前の世界時価総額ランキングにはずらりと日本企業が並んでいたが、現在は見る影もない。
日本が科学技術の先進国だったのもいまは昔だ。日本が足踏みをしているあいだに、世界はどんどん先に進んでしまっているのだ。それでは、いったい日本はなぜここまで沈滞してしまっているのだろうか?
その原因は『流動性の低さ』に尽きると考えている。日本における人材の流動性の低さは、目を覆うばかりだ。人間の能力というものは、自分ひとりで成立するものではない。適材適所というようにその人に合った環境なり組織なりがあって、初めて人の能力というものは最大限に発揮される。
日本では、企業の新卒一括採用がいまだに慣習となっているが、高校生や大学生の段階で、自分に何ができるのか、自分は何がしたいのか明確に意識できている人は、本当にほんのひとにぎりだろう。ある企業が自分と合わないというのであれば、さっさとその企業を辞めて別のところに移動するべきだが、日本社会はの仕組みはとことん企業間移動を妨げるようにできている。企業が人を正社員としていったん雇用したら、基本的に解雇することはできない。労働者としては、簡単にクビを切られない反面、企業の言うなりにならざるをえなくなる。給料が安くても文句は言えないし、なかなか休むこともできない。マイホームを買ったとたん、遠方に転勤を命じられることだってある。不満を飲み込んで嫌々でも仕事をしていれば、クビになることはないわけだから、生活に安心感があるというメリットもあるわけだが。
こんな日本が沈滞から抜け出すには、人材の流動性を高めるしかない。国や自治体の施策はもちろんだが、個人が自分の人生を攻略するうえでも、「流動性」が最大のキーワードとなってくる。ヒトが動かないと、何も物事は進まない。机上の空論で「こうすればうまくいく」と言ったところで、実際にヒトが動かなければ経済は熱を発しない。ここでのヒトの移動とは、場所の移動だけでなく職の移動という意味が重要である。
そのような意味で日本においてヒトが動かないというのは、民間企業に限った話ではない。政界、官界、財界、学界、あらゆる分野において流動性に乏しく、ヒトが動かずにいるのが、日本の現状だ。人や企業を元気にするための原則は、高い流動性だ。だからコロナ禍にあっては、現実的なヒトの移動、場所の移動が制限されることで、経済が大打撃を受けた。特に、飲食業界や観光業界などの落ち込みが激しい。
流動性とは、現実的なヒトの移動や場所の移動にとどまらず、企業の新規参入や廃業、転職などももちろん含まれる。残念ながら、多くの政治家は、いまの利益を守りたい人たちからの票をあてにするので、どうしても現状維持に走りがちだ。自分が利益を受ける立場につくと、既得権益は甘いささやきにもなるからだ。
流動性こそが、未来には不可欠だと僕は考えているが、なかなか日本社会は動くことができない。
リスクを恐れる日本人ならではのマインドもあるが、法的な足かせがあることも大きい。
最大の制約は、「解雇規制」だ。
整理解雇の四要件といって、人員整理の必要性、解雇回避努力義務の履行、被解雇者選定の合理性、解雇手続きの妥当性、これらすべてを満たさずに解雇すると、それは不当解雇ということになってしまう。
だから企業は、人員の調整を非正規社員で行うことになる。正社員の立場は強固に守られているが、それが逆に正社員を苦しめている元凶にもなっていることはあまり知られていない。クビを切られない代わりに、正社員は企業側からいいように使われてしまう。
残業を断りにくかったり、有給休暇を取りにくい雰囲気があったり、理不尽な要求にも応えなければならず、ストレスがたまるというのは、サラリーマンなら誰しもが経験していることだろう。解雇規制があることで、企業側は柔軟に人材を入れ替えることも難しい。
新しい事業を始めるとなったら、その分野に長けた新しい人材を雇いたいところだが、従来の人材を解雇するわけにはいかない。一見、正社員の地位は安泰のように見えるが、実のところ、企業にとっては「社員に逃げられるリスク」がなくなる。社員に逃げられるリスクのない企業には、社員を引き留めておくために、社員の労働条件を良くしようというインセンティブが働かない。つまり、こうして雇用の流動性がなくなると、その企業は、社員の利益をできるかぎり高めようという熱を発しないのだ。
アメリカのギャラップ社が2017年に発表した調査では、日本において熱意あふれる社員の割合は6%。アメリカの33%、世界平均の15%と比べて圧倒的に低く、139ヵ国中132位という有様だ。
そこで、解雇規制を緩和するべきだと主張すると、必ず「クビ切り橋下だ!」という批判の声が上がるのだが、僕は企業が社員を一方的に解雇できるようにしろと言っているのではない。
大事なのは、人材のマッチングだ。人材の移動を制度としてきちんと支援するというのが、解雇規制緩和の大前提である。企業と個人をマッチングさせるための仕組みを作る。必要なスキルを身につけられる教育プログラムを作り、誰でも無償で受けられるようにする。そうして、企業を辞めた人間が転職するまでのあいだ、一定の生活費をしっかり補償する。そうした人材移動を支援する仕組みを作ったうえで、企業のニーズと合わない人材は交代してもらえるようにするのが雇用の流動性を高めるための理想だと考えている。
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人も、経営も、商品も、現状維持に徹し、一つも変わることがなかったら、その組織も、人も、商品も時代遅れになる。
緊張感や、恐れや、危機感がなく、安閑とし、心や魂をゆさぶられることがないからだ。
世界が同時中継で、コロナによって激変する現代、すべてにわたって流動性を高め、日本の活力を再生し、
且つ我孫子を元気にしたい。
「流れぬ水は腐る」という言葉がある。手賀沼がそれを具現する、北千葉上水を流し込んで、事態を薄めて様子をみているが
沼底に沈殿した汚泥には放射能までも含まれて、更なる難問を抱えてしまった。ワースト7〜3位の間を行ったり来たりでワーストワンを脱却したとは言え、先は見えない。
流れる水は腐らないが、流れない水は腐るということは、人間の営みにもすべてに言えることだ。地域の場合は転入がなくても新たな命が生まれて、愛情の中で正しく育てば、日本も我孫子も未来に光明はある!と思う。