コロナ禍のこのところのアフリカの感染状況はどうか。世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局によると、3月14日現在の同事務局管轄内の47カ国の検査陽性者数は291万5874人、死者は7万4486人。47カ国の総人口は約10億人なので、10万人当たりの感染者数は約292人である。
オーストラリアの有力シンクタンク「ローウィー国際政策研究所」が2021年1月末、世界98カ国・地域が新型コロナウイルスにどの程度効果的に対応できたのかを指数化し、ランキングにして公表したところ、興味深い結果が出た。
1位ニュージーランド、2位ベトナム、3位台湾――と、アジア太平洋勢が上位を占める中、アフリカからルワンダが6位に入った。それだけではない。45位の日本よりも上位にランキングされたアフリカの国が、ルワンダを含めて実に13カ国もあった。ちなみに英国は66位、米国は94位だった。
アフリカ諸国は常に様々な感染症の脅威に直面しているため、感染症対策に習熟している行政官や医療関係者が多いのである。その結果、短期集中の徹底した都市封鎖や迅速な検査・隔離の実施など、適切な感染防止策を講じたアフリカの国が少なくなかったのである。
新型コロナの感染が拡大し始めた1年前の段階では、ウイルスの性質は今ほど解明されておらず、この感染症が人間にどのような影響を与えるのか判然としなかった。そうした時点で、起きるかもしれない最悪の事態を想定し、感染爆発について警鐘を鳴らしたこと自体は否定されるべきではないだろう。
問題は、先進国のマスメディアがアフリカにおける感染爆発に警鐘を鳴らすニュースを報じたことではなく、感染爆発の危機をあおることには熱心でも、アフリカ諸国が感染爆発を抑え込んだ事実にはほとんど関心を示さないことだろう。アフリカの人々は、そうした先進国側の関心の持ち方に、自分たちを「格下」と見なすオリエンタリズムとサイードが指摘した意識を感じ取っているように思われる。
21世紀に入って以降のアフリカは各国で経済成長が続き、最先端のビジネスが興隆するなど急速な変貌を遂げており、人々は自信を深めている。「支援が必要なアフリカ」「ケタ違いの悲劇が起きそうなアフリカ」といったアフリカ認識は曲がり角を迎えている。
出典:朝日新聞社(3月21日)
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