前田英子裁判長は、原発の半径30キロ圏に94万人が暮らすことを踏まえ「実効性ある避難計画や防災体制が整えられているというにはほど遠い状態で、人格権侵害の具体的危険がある」と理由を説明した。
東海第二原発の30キロ圏には14市町村があり、人口は原発の立地地域として全国最多。原告弁護団によると、事故時の避難計画の不備を理由に、原発の運転差し止めを認めたのは初めて。判決では、30キロ圏に住む原告住民79人の請求を認める一方、それ以外の請求は棄却した。
原電は控訴する方針。東海第二原発は10年前の東日本大震災以降運転を停止している。
東海第二原発は2011年の東日本大震災の津波で被災し自動停止し、現在も止まったまま。原電は再稼働に向け、原発の事故対策工事を進めているが、判決が確定すると、再稼働できなくなる。
◆課題抱える避難計画の策定
判決によると、原子力災害対策指針に基づく避難計画では、原発から半径5キロ圏は事故時すぐに避難が求められる。5キロから30キロ圏ではまず屋内退避、その後に放射線量が上がると避難することになる。しかし、避難計画の策定が義務付けられる30キロ圏の14市町村のうち、計画を策定済みなのは5市町にとどまっている。
前田裁判長は「人口15万人以上の日立市やひたちなか市や、27万人の水戸市は計画の策定に至っていない。策定した5自治体の避難計画も、複合災害などの課題を抱えている」と指摘した。
原発事故と大規模地震が同時に起きた場合、住宅が損壊して屋内退避が難しくなることや、道路の寸断による情報提供体制がないことを挙げ「防災体制は極めて不十分であると言わざるを得ない」と強調した。
一方、地震や津波の想定などに関しては「安全性に欠けるところがあるとは認められない」と原電側の主張を認めた。
出典:東京新聞(3/18)