新型コロナウイルスの感染状況について、フランスは1日の感染者数が11月中旬以降、初めて30000人を超えてた。南仏は規制が強まり、取り締まりも更に強化されている。小さな商店が何軒かあるが、18時以降、警察が通りにいると伝えている。
ドイツでは、昨年11月1日よりロックダウンがかかったまま、すでに3ヵ月以上が過ぎた。学校や幼稚園はもちろん、商業施設も飲食店もホテルもジムもコンサートも動物園も、全て閉まっている。イツに通勤している人たちは、2日おきに陰性証明を取らねばならず、これが本当に機能するのかどうかは疑問だ。
15日の段階では、ほぼ3分の1の車が書類の不備などでUターンを余儀なくされたという。ヨーロッパではトラック輸送が多いので、このままいけばドイツではまもなく、部品不足で生産ラインを止めなければならない企業も出始めると思われる。報道されている映像では、陰性証明を持っていない人のために国境にテント張の仮の検査場が作られているが、吹きさらしの上、待ち時間は3時間。しかも、折しも寒波到来と重なった。当然のことながら、チェコはもちろん、やはりこの国境を利用するスロバキア、ルーマニアなどからも、大きな不満が出ている。
ドイツ中の街では、その中心の、一番賑やかで美しい場所がゴーストタウンになって久しく、ロックダウンが解除されても、小売店が元に戻るのかどうかが危ぶまれ始めている。
家族や親戚や友人と家で集まることさえ、未だにほぼ不可能。こちらは警察が回ってくるわけではないが、たいていの州では、別世帯の人間は、たとえ家族であっても、1人だけしか入れてはいけない決まりとなっている。
なお、これも州によって異なるが、夜9時(最初は8時だった)から朝5時までの外出禁止令の続いているところもある。
バイエルン州の田舎で男性が夜11時に孫を車で送り届けたところ、500ユーロ(約6万円)の罰金を課せられたとか、シュトゥットガルトで介護に従事している女性が朝5時前に家を出たら340ユーロ(約4万円)の罰金を取られたとか、気の毒なケースも聞こえてくる。各州がネットで公表している違反行為と罰金のリストは数ページにわたる。
政府は、10万人あたり7日間の新規感染者の合計数を基準値として、それが50を下回ることを目標としていた。一時は200を超えていたその値が、1月の半ば頃からようやく60〜70になってきたため、国民は2月14日と言われていた規制緩和を心待ちにしていた。
ところが、2月10日、メルケル首相、保健相、各州の州首相らがオンライン会議で話し合った結果、緩和の指針値が50から35に変更され、飲食業や観光業は大ショックを受けている。しかも、ロックダウンは少なくとも3月7日まで延長される。
2月17日現在、イギリスの変異型ウイルス感染の割合が全体の2割を超えたこともあり、メルケル首相はロックダウンの早期解除にも、学校や託児所の再開にも反対している。
しかし、多くの州首相らはできるだけ早く段階的な緩和に持っていきたい。州首相らがロックダウン解除を求める一番の理由は、産業の停滞もさることながら、子供たちだという。
一方、イギリス発の変異型ウイルスは、チェコと、オーストリアのチロル地方で蔓延しており、その両方と国境を接しているバイエルン州は戦々恐々だ。
そうした懸念が高じて、バイエルンでは、2月14日の日曜日から国境を閉めた。アウトーバーンだけでなく、普段なら国境であることさえ気づかないような小さな道にも大勢の連邦警察官が出て、入国する車を一台一台調べるという物々しさだ。
初日は日曜日だったので混乱はそれほどでもなかったが、月曜日には多くの国境で渋滞が続いた。通過できるのは、ドイツの医療、及びライフラインに関わる職場の従事者(チェコから毎日通勤している看護師や介護士が多い)、長距離トラックの運転手などだが、いずれも、48時間以内のコロナの陰性証明を持っていなければならない。
つまり、ドイツに通勤している人たちは、2日おきに陰性証明を取らねばならず、これが本当に機能するのかどうかは疑問だ。
15日の段階では、ほぼ3分の1の車が書類の不備などでUターンを余儀なくされたという。ヨーロッパではトラック輸送が多いので、このままいけばドイツではまもなく、部品不足で生産ラインを止めなければならない企業も出始めると思われる。
報道されている映像では、陰性証明を持っていない人のために国境にテント張の仮の検査場が作られているが、吹きさらしの上、待ち時間は3時間。しかも、折しも寒波到来と重なった。
当然のことながら、チェコはもちろん、やはりこの国境を利用するスロバキア、ルーマニアなどからも、大きな不満の声が上がっている。それどころかEUの保健委員会までが、「これは防疫対策として正しいやり方ではない」とドイツを批判した。
ドイツは、日頃はヨーロッパの統合を叫んでおり、他国が国境検査などをやろうものなら、厳しく非難するが、実は、昨年の春に南欧で感染が拡大した際も、一方的にフランスやデンマークの国境を閉じて非難されている。
ただ、現在、ドイツの感染状況を見ると、確かにチェコとの国境付近だけで異常に感染者が多い。チェコでは人口1000万人のうち、すでに100万人以上が罹患したという状況なので、必死で防衛しようとしているバイエルン州のジレンマはわからないわけではない。
国境検査と入国制限は、少なくとも2月23日まで続く予定だが、もちろん場合によっては延長される可能性もある。
世帯の半数を占める一人暮らしの人たちの孤独も深刻だ。運動不足やストレスによる健康障害、検診を控えたための疾病の早期発見の遅れなど、一年以上続くコロナの悪影響はすでに計り知れない。前述のように、子供たちの被害も大きく、多くの州首相たちは、ロックダウン以外の対策を模索している。
ニュースを見ていていつも引っかかるのは、ホームオフィスや、子供の遠隔授業の様子がニュースで取り上げられるときに流される映像は、広々とした、豊かで清潔そうな家庭ばかりだ。広いテーブルの上には本やペンがきちんと並べられ、親子がそれぞれパソコンを前に、仕事をしたり、勉強したりしている。背景に見えるのは綺麗なオープンキッチン……。
しかし、実際には、子供のいる家庭が四六時中このように整然としているはずはないし、家族の仲が悪かったり、親が失業したり、アル中だったりという家庭もあるだろう。
学校の再開を一番必要としているのは、勉強する落ち着いた環境も、パソコンも、親からのサポートもない子供たちだ。メディアの取り上げる映像はあまりにも現実と乖離していて、これでは、メディアの役目を果たしていないのではないかとさえ感じる。
なお、法律家は、違った理由でロックダウンをすぐ解除するべきだと主張する。ロックダウンで掛けられている規制は悉く基本的人権の侵害であるのに、政府は明確な法的根拠も出さず、国民防疫法だけを盾に強行し、罰則まで課している。
政府は今のところ接種を義務化しないと言っているが、このままいけば、義務ではないにしろ、コンサートも、レストランも、美術館も、ジムも、接種者専用ということにもなりかねない。接種の“先進国”イスラエルでは、すでにそうなりつつあるそうだ。
参照:川口 マーン 惠美 現代ビジネス掲載
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80406?page=2