しまむらの店舗は全国に1430店(2020年11月時点)と、ファーストリテイリングの国内ユニクロ事業店舗数である813店(20年8月時点)よりも断然多い。「ネット通販」という選択は必然だったが、若年層取り込みの軌道修正に加え、今後はネットと店舗をいかに組み合わせて、これまでのようにニーズを拾っていくかが課題といっていい。
この先は若年層の取り戻しと広がった店舗をいかに活用し、ネット通販と組み合わせるかがしまむらのメインテーマになりそうで、中期的にEC事業売上高を全社売上高の5%程度まで成長させる考えだ。
すでに作業着チェーンのワークマンプラスは、インフルエンサーマーケティングを展開、インフルエンサーに着てもらって着用感をネット上で公開するなどしてファン作りを進めている。
しまむらも、やはり「しまラー」を核にネット、店舗での購買につなげるマーケティング戦略が必要ではないだろうか。
かつてしまむらは「生活道路に面したサンダル履きで来店できるような店」(首脳)を目指してきており、小商圏を対象にしているから店舗数が増えていった格好だが、そうした経緯もあって、すでに店舗自体は飽和状態も指摘されている。
しまむらの商品は、ユニクロのようにSPA(製造小売業)的なベーシックな商品中心の品ぞろえと違い、多くがアパレル問屋からの仕入れ商品。このため、機動的に売り場にファッション性を打ち出せるのがメリットである。仕入れ先と協業し、いち早くファッション性を追える体制を築くことにしたというわけだ。
なぜ、もっと早くやらなかったのか思うが、この売れ筋商品の短期生産の導入で売り場に変化を持たせ、なるべく需要と供給のタイムラグが生じないようにし、ファッション性を重視する若年層の支持を取り戻したということが、既存店売上高の伸びを生み出しているといえる。11月17日付の日本経済新聞によれば、「しまむら、発注から納品まで大幅短縮」という見出しの記事が掲載されている。需要に応じて売れ筋商品を投入できる短期生産の導入で若年層の向けの商品を30%まで拡大したと報じている。
しまむらには先述したように、「しまラー」と呼ばれる定期的に店舗を巡回するような根強いファンがいる。こうした「しまラー」たちは、商品をチェックして「売り場、商品が変わった」という情報を拡散しており、こうした情報が援護射撃となって、既存店の「復活」につながっているというのも一因にはあるだろう。
意外かもしれないが、しまむらは定期的に社員らがパリやロンドンのファッションショーや市場を視察して欧州の先端のトレンドを押さえ、それを仕入れや企画に反映させている。
しまむらは10〜20代の若い女性に支持されていた。ファッションモデルの益若つばささんもしまむらの服を愛用していることで話題を呼んだことがあるが、若者が離れていたと思っていたら、店頭では意外と若者が戻ってきているように感じられた。
しまむらの「若者離れ」が生じたのは、商品の絞り込みが原因といわれてきた。さかのぼること4年前。2016年には陳列商品を売れ筋商品中心に絞り込み、商品アイテムを「3割削減する」という方針を打ち出したのだ。
もちろん、当時の経営陣の判断ではさらに商品数を絞り込み、在庫量を削減したり店舗での作業を減らしたりということが狙いにあったとみられる。効率経営を長く続けてきた、しまむららしい業務改革ではあった。
しかしこの結果、売り場でなんとなく、「バラエティー感」や「宝探し感」も薄れてしまった。そんな状態が長く続いたため、客離れを起こしてしまったのだろうと推察できる。
今は「コロナ禍による『巣ごもり消費』もあるのだから、仕方ないだろう」と思っていたら、6月から月次の売上高の状況が一変しているではないか。
今年3〜5月は2ケタ減だったが、6月の既存店売上高はなんと前年同月比27.0%増。8月は同4.5%減と落ち込んだが、9月からは再び増加基調に入り9月は同11.1%増、10月同20.7%増、11月同11.3%増と2ケタの伸び率を示しているのだ。
8月を除けば6月以降、大きく伸びV字回復をしている。もちろん、前年同月の実績が悪かったので、大きく伸びているようにも見えるのかもしれないが、商品や価格、売り場が変わっていなければ、これほどの回復はないだろう。
出典:ダイヤモンドオンライン(12/2)