2020年11月03日

野口博士を支えていた、我孫子の人(血脇守之助)

誰もが知る歴史上の偉人たちは、もともと優秀だったからその偉業を成し遂げられたわけではない。ではなぜ偉業を成し遂げられたのか。そこには苦境を支える人の存在があったからで、それが時に、妻や恋人、親族であったり、恩師である場合などがいらしゃいます。

 そんな教科書では知ることのできない、真山知幸/こざきゆう著『もうひとりの偉人伝』(冬幻舎)から、一部を抜粋してご紹介します。


*   *   *

ダメダメ人間だった野口英世を見捨てず援助した血脇守之助
日本を代表する(?)ろくでなし



みなさんがよく目にする千円札の「顔」にもなった世界的な細菌学者、野口英世。福島県の貧しい農家に生まれた野口は、おさない頃にひどいやけどを負い、左手が不自由になってしまいました。そんなハンディキャップをはね返すように、野口はひたすら勉強にはげみ、医師になります。そしてアメリカにわたり、人々を苦しませていた感染症の研究に人生をささげたのです。

一見、非の打ちどころのない「立派な人物」に思える野口ですが……実は全くちがいました。野口は行動がいつもとつ然で、金づかいがあらく、周りに迷惑をかけまくる男でした。しかし、そんな野口をけっして見捨てなかった人物がいました。歯科医師の血脇守之助です。

赤の他人に甘えまくる


2人の出会いは、ぐうぜんでした。ある日友人のもとを訪ねた当時27歳の血脇は、そこで汗を流しながらしんけんな顔で本を読む、21歳の野口に出会います。見るとその本は、フランス語で書かれたむずかしい医学書です。

「どこでフランス語を習ったの?」

「神父さんや学校の先生に習いました」

この会話をきっかけに、野口は血脇を質問攻めにします。医学の知識を得ようとする野口のどんよくな姿勢に感心し、血脇はこんなことを言いました。

「東京に出たら、私を訪ねて来なさい」

このとき野口はまだ、医学校の試験に合格していません。血脇からすれば、「がんばれよ」という軽いはげましのつもりでした。ところが、それから1年後。おどろくべきことに、試験に合格した野口は本当に東京に出てきて、いきなり血脇を訪ねます。しかも、無一文で。

「なんでもしますから、私をここに置いてください!」

とつ然のことに困惑しながらも、血脇はこの青年のために住むところを探し、学費も出してやることにしました。



血脇に助けられて東京生活をスタートさせた野口。しかしこれは、スネかじりのほんの始まりに過ぎませんでした。

「ドイツ語を習いたいのですが」

「私立の医学塾で学びたいのです」

野口の要求はどんどんエスカレートしていきます。そのたびに、血脇は自腹を切って願いをかなえてやりました。

飲んだり食べたりすることが大好きな野口は、血脇からもらったこづかいを遊びにもどんどん使ってしまいます。

「あんな男に学費を出すなんて、バカげているよ」

周囲からそう言われることもありました。血脇だって、けっして裕福なわけではないのですから当然です。それでも血脇は、野口を支援することをやめませんでした。同じ医学を志す者として、彼の成長が楽しみだったからです。事実、血脇のおかげで野口はドイツ語をマスターし、医学の知識をどんどん吸収していきました。そして、医師になるための試験に異例の若さで合格したのです。

留学費用を一夜でパーに


試験に受かって調子に乗った野口は、今度は「アメリカに留学したい」と考えます。しかし、お金がありません。そこで野口は、なんとたまたま会ったお金持ちの夫妻に彼らの娘と結婚することを約束し、アメリカ留学の費用をゲットします。しかも、最終的にこの娘とは結婚しなかったのですから、ほとんどサギみたいなもんです。アメリカ行きが決まってうかれた野口は、高級店に仲間を招き、自分で自分の送別会を開きました。飲めや歌えやの大さわぎ。気がつけば、そこには高額の請求書が……。支払いのアテなどない野口は、なんとアメリカ留学の費用をそこでほぼ使い果たします。

うなだれる野口。その性格を知りつくしている血脇も、これにはさすがにぼう然としました。しかし、それでも血脇は見捨てません。なんと借金してまで、野口の留学費用を用意してやったのです。

さすがの野口もなみだを流して感謝し、留学先では心を改めて研究にぼっ頭しました。そして数々のすばらしい研究成果を残し、たくさんの人の命を救ったのです。



一方、野口にふり回され続けた血脇は、息子にこんな遺言を残しました。


出典:https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/10038

「女にほれても、男には絶対にほれるな。女に費やす金などたいしたものではないが、男に吸い取られると底がない」

血脇にとって野口は医学界の希望であり、かけがえのない存在だったのでしょう。そんな彼を一生かけて見守り、支えることに、血脇は使命感とよろこびを感じていたのかもしれません。
posted by Nina at 10:25| 千葉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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