16年の熊本地震、今夏の甚大な豪雨災害からの復興を目指す地元へ、27日の関脇正代の初優勝は大きな勇気になった。
地元からの熱烈な応援は日ごとに増えた。26日のPV観戦者は、100人以上だったが、この日は正代の取組が近づくにつれ、準備された100席では足りず、体育館の外で立ち見も出るほど、大盛況の約250人に膨れあがった。
正代が土俵に上がると大太鼓が鳴り響く中、「正代コール」が起こり、優勝の瞬間はお祭り騒ぎになった。父親の巌(いわお)さん(60)や母親の理恵さんをはじめ、後援会関係者や地元相撲クラブの子供たちが万歳した。だれもが立ち上がり、抱きあって喜んだ。祝砲の花火が20発も打ち上げられ、同体育館前には手づくりの「正代関 優勝おめでとう」と書かれた幕が飾られた。
巌さんは、息子から寄付された浴衣の生地で作られた黒マスクと法被姿で声援を送り「感無量です。ホッとした」。取組前に「自分の子どもじゃないみたいな、別世界の人のような、距離が遠い感覚でいる」と表現した理恵さんは、初優勝に「こっちが緊張しました。よく頑張った。素晴らしい」と声を弾ませた。今夏に九州を襲った豪雨災害にも触れ「特にひどかった被災地の人も応援してくれていると聞いている。喜んでもらえたと思います」。4年前の熊本地震など災害から復興を目指す人々にとって、試練を乗り越える勇気となりそうだ。
理恵さんは、携帯電話のLINEで激励し続けた。正代と会う時には「おめでとう、頑張ったねと伝えたい」。実家の玄関に「勇往邁進(ゆうおうまいしん)」と刻まれた竹が飾られている。理恵さんが「素直に小学校から相撲一色だった」という正代。勇往邁進の言葉の通り、恐れることなく実直に目標へ突き進み、夢をかなえた。
宇土市役所は時期は未定ながら優勝パレードを予定している。役所から同体育館まで約1キロをパレードし、同体育館での祝勝会も考えている。元松茂樹市長(55)は、新型コロナウイルスの影響を鑑み「タイミングの問題はあるが、明日、明後日に(正代の)部屋と相談し、早ければ10月中旬にも行えれば」と話した。
参照:日刊スポーツ(9月27日)