同事業は、22日で開始から1カ月が経過。東京発着の旅行を対象から除外するなど、新型コロナの感染拡大と重なったスタートだったが、開始から1カ月が経過した。そして、それを打ち出した現政権の首相から、体調不良で辞任との発表がされた。
観光庁の蒲生篤実長官は21日の定例会見で、事業の効果について「一部旅行会社によると、近距離を中心に予約は堅調と聞いている」と述べた。事業の効果がかたよる懸念については、「特定の地域に集中しないよう、小さい宿泊事業者にも目配りできるような予算執行の管理をしていきたい」と話した。
観光庁によると、宿泊事業者は全国で約3万5000(2016年時点)あるが、そのうち、20日時点で同事業への参加登録済みは半分以下の1万6703にとどまることも判明。仕組みが複雑で登録していない中小事業者が多く、観光庁は21日までとしていた申請期限を延長することを余儀なくされた。また、お盆時期の帰省を念頭に、各自治体が県境をまたぐ移動の自粛を呼び掛けたこともあって、旅行を控える人が続出。JR旅客6社が18日に発表したお盆期間(7〜17日)の利用状況は、昨年の24%にとどまった。
これまでに事業に登録したホテルや旅館での感染者は合わせて10人で、そのうちGoToトラベルの利用者は1人だったと安全性を強調した。
政府の観光支援事業「GoToトラベル」を巡り、宮城県の村井嘉浩知事は24日の定例記者会見で、新型コロナウイルスの影響で売り上げが低迷する関連事業者の下支えとなり、「やって良かったと思う」と評価する考えを示した。村井知事は「一つの考え方」と述べるにとどめたが、「『GoTo』がなければ、(経済は)かなり悲惨な状況になっていた」と指摘。経済波及効果は統計による分析が必要だとしつつも、「相当あったと思う」と話した。東北では近県を行き来する観光客が多く、旅行による爆発的な感染拡大は生じていないと説明し、「患者の発生を抑え、経済を回していくとの目的は達成できている」と強調した。
岩手県の達増拓也知事は21日、「失敗と言っていい。7月に始めるのは早すぎた」と政府を批判した。岩手県では同事業がスタートした1週間後の29日に、県内初の新型コロナ感染者2人を確認。それまで県内に感染者がいなかったため、県外観光客への抵抗感が強く、受け入れの準備は進んでいなかった。
一方、「事業開始後の8月から予約が多く入りはじめ、9割近く客足が戻ったホテルもある。大きな下支えとなっている」(大分県の別府市旅館ホテル組合連合会の担当者)との声もあった。
公明党の山口那津男代表からは18日の会見で「感染が広がる状況で、当初構想したような展開になっていない」と半ば“失敗”を認めるような発言まで飛び出した。自治体からは事業の中止を求める声も出ており、政府が掲げる「地域経済の好循環」は遠そうだ。
《菅官房長官は反論》菅義偉官房長官は21日のテレビ朝日番組で、「GoToトラベル」は時期尚早などとする批判に反論した。「やらなかったら大変なことになっていた。地域の活性化に少しは役立ってきている」と述べた。政府のコロナ対策に関し「国民の命と健康を守り、社会経済活動と両立させていく。それをしないと国が立ちゆかなくなる」と理解を求めた。
つづき