満蒙開拓は長崎原爆に匹敵する犠牲者が出たにもかかわらず、最近まで積極的には語り継がれてこなかった。
満蒙開拓平和記念館(長野県)館長の寺沢秀文(64)は「自国の利益のために多くの犠牲を出した誤った国策の具体例。為政者は触れたくなかった。送り出された人も夢を抱いて渡ったが侵略に加担した事実に気付き口を閉ざした」と指摘。両者にとって不都合な史実だった。
特に引き揚げ時の性暴力被害者の体験談はほぼない。開拓団への聞き取り調査をしているNPO法人社会理論・動態研究所(広島市)研究員の猪股祐介(42)は理由を「『汚れた存在』『哀れむべき存在』と差別され続けたからだ」とみる。
黒川開拓団の女性たちの言葉は「性暴力被害者から言葉を奪い続けている私たちの責任をも問うている」と捉え、単純に敗戦の悲劇として消費するのではなく、語らせなかった社会を省みるべきだと訴える。(敬称略)
※2018年4月24日から11月19日までの「岐阜新聞」に掲載されました。文中の日付、人物の年齢等は新聞掲載日時点のもの。
https://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/kurokawa/20190821-165116.html
この他にも、福岡での外地から帰国した女性たちの性被害の聞き取り調査もされていた。
日本兵が犯した性暴力についての懺悔も「記憶の澱」という記録番組が残されていた。
http://kry.co.jp/tv/kiokunoori/