12月31日に放送される「第70回NHK紅白歌合戦」に、『AI美空ひばり』が登場する。没後30年を迎えた昭和の歌姫・美空ひばりさんの新曲ライブを、現代のAI(人工知能)技術を用いて実現するというプロジェクトとして、二年ほどの歳月をかけて動き出していた。美空ひばりさんの歌声をAIで再現し、新曲「あれから」を歌唱するのだ。9月29日に特集番組が放送され、12月18日には新曲「あれから」がCD発売された。亡くなったアーティストの歌声を人工知能(AI)によって蘇らせ、新曲としてCDがリリースされるのは世界初の試みになる。
ひばりさんの声は、ヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID:AI(ボーカロイド:エーアイ)」で再現。過去の音声データをAIが学習し、「神秘の歌声」と表現された本人の歌声に近づけた。AIがどこまで、その人を再生していくことができるか、ひばりさんの声を専門家に解析してもらうと、ひばりさんの声に「高次倍音」と呼ばれる特殊な音があることが分かりました。歌声の音の高さを示す周波数は、主に1,000Hz〜5,000Hzで構成され、普通、歌い手の声の周波数はこの範疇になります。ところがひばりさんの声には、元の音の周波数より何倍も高い数オクターブ上の7,000Hzを超える高次倍音が含まれていたのです。これに加えて、ひばりさんは、その高次倍音と複数の音を同時に出して、一人で「ハーモニー」を奏でていたということが、このプロジェクトによって分かったのです。
すでに海外では亡くなったスターを3Dホログラムなどのデジタル技術で蘇らせる手法は、海外では、2014年に音楽祭「ビルボード・ミュージック・アワード」でマイケル・ジャクソンが”復活”した、ほかに何人かのスターが蘇って賛否両論を巻き起こしています。
今回、NHKの再現技術ではひばりさんが、今尚、輝き続ける昭和の大スターなのかが、理由が解き明かされていきました。特に高次倍音に注目して研究し、ひばりさんが曲の美味いところで、聞く人にはそれと分からずピンポイントで出していたとひばりさんならではの歌唱法に気づかされます。その再現せずには「美空ひばり」には近づけないと驚愕、しかも意識してやっているのではなく自然に出している、なるほど少女期から天才歌手といわせた根源がここにあると見出すのです。
実は、高次倍音と一人で二つの声を出す手法は、モンゴルに伝わる伝統的歌唱法「ホーミー」の例があり、舌を特殊な形で動かして低いうなり声とかん高い音を同時に出す歌声で、こういう学びをせずに習得したひばりさんは天性の歌い手です。後援会の人達と秋元康氏の前で、作成した画像を見せる視聴会が開かれ、そこでの評を受け、再度、音声チームは「AI美空ひばり」の歌声の仕上げに取り組みます。そこで、さらに分かったことは「高次倍音」に加え、ひばりさんの歌には、楽譜に対して、音程やタイミングのズレが随所にあることを発見されました。そうしたタイミングや歌い方の癖などを再度、ボーカロイドAIに学習させて、新曲の作詞を秋元康さんによるセリフ入りの新曲『あれから』が用意され、振り付けを天童よしみさん、ひばりさんの衣装をデザインしてきた森英恵さんがドレスを担当。子息(養子)の加藤和也さんが、幼いころにひばりさんが絵本の読み聞かせをしてくれた際のテープを提供、往年のファンクラブ会員などの協力もあって、AI画像がどこまで感動の歌唱に迫れるか、HNKの技術力を結集しての究極の試みがされました。
9月に、特集番組として放送後にネット上で驚きと賛否両論の声が上がったのですが、いよいよの紅白歌合戦で披露されます。