厚生労働省の平成22年「子の有無別離婚件数」のデータでは、離婚件数は25万1,378組。そのうち子どもなしの夫婦は10万4258組で、割合にすると41.5%になります。子どもがいないということは、当然ながら孫もいない“孫なしお一人さま”の人生を送ることになります。娘(あるいは息子)夫婦にベビーグッズをねだられたり、育児のサポートを期待されたり、孫にお年玉をねだられたり、一緒に出かけて支払いを回されたり、そういう当てにされる体験をしない分、他に楽しみや老後を豊かに過ごす時間があるのです。長らく自分のペースで歩んできた“おこなしさま”なら、きっと老後の時間も自分なりに充実させるコツを会得してるはず。
結局、「子どもありコース」と「子どもなしコース」ってどっちが幸せなのか?
それは「マンションと戸建」、「賃貸と分譲」を比べるのと同じように、ライフスタイルの違い。富士山へ登る登山道がひとつではないように、歩むライフコースにも正解はない。それでも歩むルートが決めたのなら、そのコースの特徴に合わせて必要なものは準備して、ともかくゴールまでの道のりを楽しめばいいんです。
「子どもありコース」は、前半は子育てというキツイ傾斜は続くけど、後半はだんだんと緩やかになり、子どもが手を離れて自分のペースを取り戻せる。そして終盤には、優しく手を引いてくれる孫もいてくれる可能性はなくはない。我が母の晩年に孫娘が曾孫を見せにやってきたように。
「子どもなしコース」は、前半は軽快に飛ばしているけど、徐々に傾斜の角度が上がってくる後半は自分の足と杖を頼りに進んでいく。終盤に動けなくなった時のためにサポート要員を決めておき、ゴールのテープは自分で手配する。今から少しずつ用意をしておけば、いざという時に慌てなくて済む。そしてフッと横を見た時に同じような人がいれば、お互いに手を貸しあえばいい。“おこなしさま”が歩む「子どもなしコース」は、後半〜終盤に向けて装備を揃えながら、自分の歩幅で進んで行けばいいのです。
子ども一人にかかる学費は、幼稚園から大学まで全て公立で約1,000万円、私立だと約2,500万円かかると言われています。その上にこの頃は、留学だとか、修士課程だとか、進学するばあいもある。
特に働く女性にとっては、美味しいものを食べる時、ワンランク上の宿に泊まる時、合言葉は「自分へのご褒美」。いつも頑張っている自分を労わってあげる「セルフご褒美」は生活に潤いと活力を与えてくれるもの。でも浪費癖になり、貯金も出来ないで使い果たしていると、後々困ることになりかねません。
“おこなしさま”は、結婚しない場合、結婚しても子供がいないままという場合がありますが、その問題点ともいえるのが老後のこと。子どもがいれば良くも悪くも「あとは任せた」と言えますが、別の手段を検討・準備しておくことが不可欠。結婚していても、病気や不慮の事故などで先立たれることはあり、女性の方が平均寿命は長いので将来“おひとりさま”になる確率が高い。
病気や介護の問題から、相続、お墓、葬儀のことなど、“おこなしさま”は老後の懸念事項について早めに考えておく必要がある。今の時代は、自分で老後の備えをするのが大人の心得。長期間に誰にも気づかれない孤独死はできれば避けたいですよね。最近は郵便局では、見回りサービスを始めていますので、成年後見人制度と合わせて考えておくと、安心でしょう。
どうしても加齢と共に病気のリスクは高まるもの。体が不自由になったとき、面倒をみてくれる家族やサポートをしてくれる友人が大勢いるならいいのですが、最終的に頼れるものはお金。老後に相談に乗ってくれる子どもがいないので、サポートが必要になったときに、お願いできる人と資金を準備して、制度をうまく利用できるよう老後資金を用意しておいた方が安心です。
準備すべき金額は「必要な老後資金−生涯で受給する公的年金」。受給できる年金額や年数で差違はでますが、一般的な目安として3,000万円程度といわれています。“おこなしさま”の場合、さらにプラスアルファーで 1,000〜2,000万円は上乗せしておきましょう。それは、子ども一人にかかるとされる学費と同程度の金額です。なによりも大切なことは、年を重ねながらハッピーに過ごせるかということになるので、年金開始の時期も変更されたりするのですから情報収集は必須です。