5月に施行された「候補者男女均等法」は、国と地方の議会選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするよう、政党に努力を求めている。全議会の男女別議員数(2017年12月31日現在)に関する総務省のデータをもとに、朝日新聞が集計した。1788ある全国の地方議会のうち、約2割にあたる349の市町村議会は、女性議員が1人もいないゼロ議会だ。
前回の統一地方選(15年)を前に、朝日新聞が全議会から回答を得たアンケートでは、ゼロ議会は379(21・2%)あり、女性議員の割合は11・7%だった(15年1月1日現在)。その後の3年間でゼロ議会は30減り、全体の19・5%に。女性議員の割合も12・9%に微増したが、依然として女性議員は少数にとどまっている。
ゼロ議会の割合が最も高く(48・8%)、女性議員の割合が最も低い(6・6%)のは青森県。ゼロ議会が一つもなかったのは大阪府だけだが、府内の44議会のうち6議会では女性議員が1人しかいない。都道府県議会でもゼロ議会はないが、山梨、香川、佐賀の3県では女性議員が1人となっている。
女性議員の割合を都道府県別にみると、18県で1割に満たず、2割を超えたのは東京都と神奈川県だけ。最も高い東京都でも26・9%だ。男女がほぼ半数ずつの人口比とは隔たりが大きい。
日本における女性の政治参画は著しく遅れている。国会の女性議員比率は衆議院9.5%、参議院15.7%。下院で比較すると191カ国中156位だ(2016年1月現在)。10%にも満たない国は38カ国あるが、日本はそのうちの一つということになる。
現在世界平均は約22%、北京で世界女性会議が開かれた1995年の11%から倍増している。日本では衆議院は1993年総選挙の2.7%(14人)から2014年総選挙の9.5% (45人) へと3倍以上に増えてはいるものの、現状は20年前の世界平均といえる。
女性が候補者となるまでには、様々な障壁がある。一つ目は女性の場合、子育てなどの負担が女性に政治家になることを思いとどまらせる要因となる。一方で男性議員の場合は、家族的責任を免責されるばかりか、家族、親せきが「男を立てる」ように支援してくれることが多い。女性議員比率の世界平均が20年で約2倍へと上昇した最大の理由は「クオータ」の普及にある。現在120カ国以上で何らかの形のクオータが施行されている。クオータは基本的には議席割当制と候補者割当制とがあり、対象は女性のみでも両性に対してでも設計でき、配分は10%〜60%までさまざまだ。
1970年代に北欧を中心に政党が自主的に党則にクオータを盛り込んだのが始まりだが、1990年代に法的クオータがラテンアメリカで導入され、現在はヨーロッパにおいても法的クオータが広がりつつある。
アジアでもクオータは普及しており、女性議員比率が30%を超えている東ティモール(38.5%)と台湾(38.1%)では法的クオータを実施している。台湾は議席割当と候補者クオータを組み合わせる独特の手法を用いている。韓国も法的に候補者クオータを導入し、女性議員比率は17.0%となっている。日本は話にも出てこない、女性活用の後進国だ。
近年では「クオータからパリテへ」の動きが出ており、民主主義の原則として意思決定に男女が平等に参画する男女同数原則が広がりつつある。
「パリテ」というのは男女同数や同等を意味するフランス語だ。フランスが2000年にパリテ法を施行したのを嚆矢(こうし)に、近年ではラテンアメリカ8カ国がクオータ法からパリテ法へと移行し、流れを加速化させている。クオータが女性議員を増やすための「暫定的な特別措置」だとすると、パリテは「普遍的な民主主義原則」そのものだ。
世界から20年遅れている日本だが、まず現状を変えていくためには、パリテの理念を取り入れる必要がある。
パリテの理念を法的に担保していくために、「性別比例の原則」を公職選挙法で規定することを提唱したい。性別比例の原則は、人口比がほぼ男女半々である現実を意志決定の場にも反映させることを求める。両性に対する規定であるため、男性への逆差別という批判は当たらないし、性別比例という概念は、将来的には 「第3の性」の代表にも道を開く。 来春の統一地方選で、女性議員の割合やゼロ議会の数がどう変わるか、注目される。
.
朝日新聞社