睡眠についての調査は、これまでも様々にされてきたが、専門家の意見が一致した「良質な睡眠」のサインは次のようなものです。
・眠りに落ちるまでの時間が30分以内
・夜中に起きるのは1回まで
・夜中に目が覚めた場合は20分以内に再び眠ることができる
・総睡眠時間の85%以上を寝床で使っている(昼寝や通勤電車内での居眠りなどの合計が15%を超えない)
この4つをすべて満たすことが「良い睡眠」の最低条件で、ひとつでも当てはまらないポイントがあれば、睡眠負債の可能性は高くなります。
※2 National Sleep Foundation's sleep quality recommendations: first report(SLEEP HEALTH)
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毎日の「ちょっとした寝不足」が少しずつ溜まっていった結果、やがて「債務超過」に達してさまざまな症状が引き起こされることを指します。たとえば、1日30分ずつの寝不足が続いた場合。最初のうちは借入額が少ないので気が楽ですが、放っておくうちに返済できなくなり、やがて家計が破綻。心疾患やうつ病などの重大な症状を引き起こすことがあります。
「睡眠を改善するアイテムは何か?」という疑問について調べたコクラン共同計画(正確で有用なヘルスケア情報の普及を目指す国際的な非営利プロジェクト)のレビュー論文(※3)では、「耳せん」「アイマスク」「マッサージ」「アロマテラピー」「リラックス音楽」のなかで効果が認められたのは、「耳せん」と「アイマスク」だけでした。それ以外の方法については、はっきりしたデータが出ていません。
耳せんとアイマスクを同時に使うと、睡眠中のストレスホルモンが下がり、逆にメラトニンの量が増えていきます。アロマやマッサージのリラックス効果を否定するわけではないものの、現時点ではこの2つを使うのが確実です。
※3 Non‐pharmacological interventions for sleep promotion in the intensive care unit(Cochrane Library)
睡眠負債の解消に使えるのが、「昼寝」のテクニックです。
空軍パイロットを対象にしたNASAの研究(※4)では、1回40分の昼寝でパフォーマンスが34%改善し、注意力は100%の完全回復を見せるなど、睡眠負債のダメージを防ぐ効果が広く確認されています。
いまではグーグルやウーバーといった名だたる企業も昼寝を奨励しており、グーグルなどは「エナジーポッド」という専用の睡眠マシンまで導入しているほどです。
※4 Alertness management: strategic naps in operational settings(NCBI Pub Med)
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近年では、昼寝のリフレッシュ効果を高める方法として、「コーヒーナップ」というテクニックも開発されています。やり方は簡単で、15〜20分の昼寝の直前に1杯のコーヒーを飲むだけです。
疲れ気味の被験者に15分のコーヒーナップを試した実験(※5)では、普通に昼寝をしたグループよりもドライブシミュレーターの運転成績がアップ。日本で行われた実験(※6)でも、昼寝前に200mgのカフェイン錠を飲んだ学生は疲労感が減り、記憶力テストの成績も上がりました。
このような現象が起きるのは、カフェインが脳に達するまでに20分かかるからです。そのため、コーヒーを飲んでから20分後に目を覚ますと、昼寝のリフレッシュ作用にカフェインの刺激が組み合わされて相乗効果をもたらします。昼寝の目覚めをスッキリさせる効果を高めたい方は、試してみてください。
※5 Counteracting driver sleepiness: effects of napping, caffeine, and placebo.(NCBI Pub Med)
※6 The alerting effects of caffeine, bright light and face washing after a short daytime nap(ScienceDirect)
忙しい現代人のこと、あまり睡眠時間を取れていない、という人も多いだろう。しかし、年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライターにして、7万部を突破した話題書『最高の体調』の著者・鈴木祐氏は、「たった30分の寝不足の蓄積が脳に大きな影響を与えることもある」と述べる。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181013-00008072-toushin-life&p=2