6月30日、バーレーンの首都マナマで開かれたユネスコ世界遺産委員会で、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産への登録が決まった。今回の決定で、 日本の世界遺産登録は6年連続で、22件目になった。
新たな世界遺産は、日本に現存する最古の教会である長崎市の「大浦天主堂」や熊本県天草市の「天草の崎津集落」など12の資産で構成されている。 「潜伏キリシタン関連遺産」は、17世紀から19世紀、主に江戸時代にキリスト教が禁止される中、ひそかに信仰を続けた「潜伏キリシタン」と呼ばれる人々の歴史を物語るもの。厳しい弾圧に耐えながらひそかに信仰を続けた原城跡や大浦天主堂など、12の資産で構成されている。 長崎県・中村法道知事:「世界の宝物となったわけですので、それぞれの地域の方々は、大きな誇りを持っていただき、しっかりと次の世代に引き渡していくことができるよう、私たちは全力を注いでいかなければならない」。 熊本・天草市民は、「10年余り待ちに待った遺産が決定した、来た人に喜んでもらうように決意しています」などと話した。
弾圧に耐え、守り抜いた信仰の足跡が構成資産の一つ「外海(そとめ)の出津(しつ)集落」と「外海の大野集落」がある長崎市外海地区でかくれキリシタンの信者組織の代表、村上茂則さん(68)は「世界に誇れる遺産として認められた。先祖も喜んどると思う」と語る。組織の指導者「帳方(ちょうがた)」を務めた家系で、07年に継いだ。かくれキリシタンは禁教令が解かれた後もカトリックに復帰せず、潜伏期の信仰形態を維持した人々。「先祖は弾圧を受けても信仰が間違いではないと信じて続けてやってきた。必死になってつないできたものを途絶えさせたらいかん」 と、今も長崎県内に組織が残る。村上さんの「組」は近隣の二十数世帯、50人ほどで減少する一方だが、「命ある限りは守っていくつもり」だという。世界遺産の構成資産は禁教期のもので、「かくれ」の文化は含まれないが、登録決定は祈りの言葉「オラショ」とともに先祖に報告する。脚光を浴びることには複雑な思いもあるが、「これまでやってきたように静かに祈る。それは変わりません」。
一方、世界自然遺産への登録を目指していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部と西表島」については、登録が延期されることになった。
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