2018年06月28日

看守り人となる

高齢者終末期の定義の不明確さ、医学的判断の難しさがあり、栄養補給をしないという選択肢の提示の難しさがある中で、技術的な堅実性および利便性から、胃ろう処置が施されてきたのが日本の実態だ。その数、全国胃ろう造設者数26万人、年間実施数10〜12万件、人口当たり英国の12倍。この大きな差の要因は何だろう。

その一つに、日本における医療方針選択の自己決定に代わる倫理的アプローチが模索されてきても、終末期の予後予測の難しさがある。日本老年医学会より2012年の「立場表明2012」ですら、高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドラインができても、高齢者終末期の医学的判断については、明確ではない。その理由は、高齢者は複数の疾病や障害を併せ持っていることが多く、その「終末期」の経過はきわめて多様である。そのため臨死期に至るまでは余命の予測が困難であることから、「終末期」の定義に具体的な期間の規定は設けられなかった。

そもそも予後予測(一定期間における生存率あるいは死亡率)は何の目的でなされるのか。それは、疾病や老衰の終末期にあることを確認し、本人には苦しみが少なく、平穏に過ごすのが一義である。家族各人が別れの覚悟と準備の期間が必要であり、それらの目的にかなった心理的ケアも検討される必要である。

米国メディケアのホスピス入所基準には「6ヶ月以下の生存」という条件があるように、療養の場所、疾患・病態によっても求められる予後予測の内容は異なるであろう。また、予後予測は施設運営面からも求められる情報である。日本での癌の終末期を対象とする緩和ケア病棟では、その入院料は期間によって異なり、入院期間30日以内が4,926点、31日以上60日以内が4,400点、61日以上の期間が3,300点である。

現在、予後予測モデルはがんと非がんに分けて検討が進められている。今の日本では、高齢者が食事が摂れなくなったら「病院で検査を」となる。すると、がんなどの病気が見つかることもある。すると、手術や抗がん剤などの治療の選択肢を提示される。非がん疾患の場合は、予後を決定する因子はがんと比べてより複雑である。このため、予後予測ツールの有用性はがんでは認められているが、非がんでは未確認とされている。Lunney、Lynn らは日常的な身体の活動能力(ADL)に注目し、終末期の機能減退の軌跡に4つのパターン認めている。
1)突然死(虚血性疾患など) 
2)徐々に衰弱し最後の3ヶ月で変化が早まり死を迎える(癌)
3)良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に衰弱する(慢性心不全、COPD) 
4)長期間かけてゆっくりと衰弱する(認知症、老衰)

認知症、老衰の終末期について考えると、すでに長い間要介護4以上の状態である場合、ADLの低下は予後予測にはあまり頼りにならない。予後予測をするとすれば、体重減少が進み、栄養状態が悪化する時であり、これもまた倦怠感と同じく悪液質の症状である。したがって、その「終末期」に至る経過は多様であるが、臨死期に至るまでは余命の予測は悪液質の症状の経過を見れば可能であり、それによって、体重減少、食事摂取などの変化の節目を死の予兆として家族と共に確認することができるとしている。

調査では、顕著な体重減少を起こして死亡した三分の一のケースで、まず体重減少がみられ、遅れて食事摂取量の低下が起こっており、「終末期」の経過は悪液質という病態が底流にあり、これを確認したり、感じることによって予後を予測するというより、予後を予感するということになるのである。一般に介護現場では、高齢者が徐々に固形物で食べられなくなった時、体重減少に遅れて食事の摂取量の低下が起これば、あるいは体重減少と食事摂取量の低下が同時に起これば、死は近づいていると考えられる。また、痰が多くなり、発熱した時が「看取り」の開始時期とされているようだ。これによって「臨終期」を6ヶ月前後で推定できるとなれば、看取りの開始時期と考えて、家族にも胃ろうに頼るなどの要不要を納得していけるのではないか。

2005年以降、日本では死亡数が出生数を上回り、人口は減り続けている。超高齢社会の次にやって来る社会予測は、団塊の世代が80才を超える2030年代にわが国の死亡数はピークに達する「多死社会」と言われる。「多死社会」という言葉から受けるイメージは暗く不吉なのだが、私達はこの問題に向き合っていかなければならない。戦後、医療の進歩はめざましく、日本の医療レベルはどんどん高くなったので、80才未満での死亡数は増加しておらず、 増加しているのは80才以上の高齢者の世代からである。これはすなわち、治せる病気は医療により治しているということで、治せない病気や寿命で亡くなる人が 増加する時期には死亡数が増えているということだ。日本の医療計画では、病床数は減少することはあっても増加することはないので、2030 年には約60 万人の方に看取りの場所がない計算になる。そうなると、これからは自宅や地域の多様な施設などで、看取りを行っていく必要がある。
 

参照HP:Opinions
       https://web-opinions.jp/posts/detail/47


つづき
posted by Nina at 12:00| 千葉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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