我孫子を別荘地として紹介した先駆者でもある嘉納治五郎師について、文化を守る会の「放談くらぶ」の講演がありました。その中で、「利他共栄」「精力善用」を掲げて、講道館の弟子たちに説いたこと、灘中の創設にもかかわって同様にこの教えを校是としたことなどについても、触れられました。
嘉納治五郎は、常に言行一致の人間的魅力をもって弟子や学生たちに慕われる人物で、その叔父を幼い時から父親代わりのように見て育った柳宗悦という頗る優秀な甥は、我孫子に呼び寄せられて暮らすようになり、白樺文人たち、その友人たちが同地に寄り集まり、当時に手賀沼は清涼な美しさをたたえていた景色はそうした人々に好まれたのです。
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京セラ・KDDIの創業者で、日本航空を立て直した等、経営者として極めて高い評価を残した稲盛和夫氏は「鹿児島で生まれ育つと、西郷隆盛の教えは
何か風の音のように自然と耳に入ってきます。 私も小学生になると、西郷の教えを先生から たびたび聞かされていましたし、郷中教育(薩摩藩伝統の教育)でも教わりました。 小学校でも、郷中教育でも、たびたび西郷の話が出てきたのです。私は幼い頃から西郷に対して、鹿児島が生んだ大偉人として尊敬の
念を抱いていました」(『無私、利他』プレジデント社、2017)。
また、企業経営において、長く繁栄を続ける企業をつくりあげていこうとするなら、「徳」で治めていくしか道はないと、次のように言われました。
「 欧米の多くの企業では一般に、覇道つまり「力」による企業統治を進めています。 例えば、資本の論理をもって人事権や任命権をふりかざしたり、または金銭的なインセンティブ(誘因)をもって、従業員をコントロールしようとしたりするのです。 しかし、権力によって人間を管理し、または金銭によって人間の欲望をそそるような経営が、長続きするはずはありません。
一時的に成功を収めることができたとしても、いつか人心の離反を招き、必ず破滅に至るはずです」 (『「成功」と「失敗」の法則』致知出版社、2008年)
因みに、稲盛氏は、鹿児島生まれで、大阪の大学の医学部を目指すが合格せず、県立鹿児島大工学部を卒業。
妻は禹長春(親日朝鮮武人と日本人女性との間に誕生、日本育種学界で活躍、韓国近代農業の祖)の四女。
生まれ故郷の偉人譚に触れて触発され、身の回りの人々に影響をうけて、成功が導かれるまで目標を目指し続けています。
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樺旦純 『運のいい人の習慣』(KKロングセラーズ)にも、同様な事が次のように書かれていました。つまり、組織のトップや上司、親や教師のような立場が持っている、「正当性パワー」や「報酬性パワー」や「懲罰性パワー」は封印をして、「準拠性パワー」で勝負した方がいいといっているのです。 準拠性パワーは「徳」という東洋学的にいう、人間的魅力。パワーがありながらも、それを使わずに治めていく何らかの影響力のこと。 徳とは、相対したとき、自然と頭が下がるような人のことをいう。 利他の心を持ち、けっして偉ぶらず、謙虚で、明るくて、人から好かれる人のこと。 昨今では、その「徳」に「情報性パワー」や「専門性パワー」があると、さらに影響力が増す事になりますが、嘉納、稲盛両氏は、十分に専門性、情報性パワーを当時にもっていたのですから、影響力があったのです。
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運は誰のもとにも訪れる。しかし、どんな人にも、同じだけの運がめぐってくるわけではない。
大きな運をつかむには、それをつかむだけのものを身につけていなければならないのである。
一つの目標を達成するためには、他人の協力が必要になってくる。
その場合、相手にも何かメリットがあれば、協力を得やすい。
では 具体的に、どうすれば人は動くのか。
一般に、人が持つ影響力は、次の6つのパワーに分類される。
このうち、どれか一つでも持っていれば、相手が自分のために動いてくれる可能性は高い。
1. 正当性というパワー
相手を従わせる役割や地位、権限などを持つ。父母と子供、教師と生徒、同級生、上司と部下といった関係。部下が従うのは、相手が自分の上司で、命令を与える権限を持っているからである。
2. 情報性というパワー
相手の求める情報を持っている。いわゆる情報通の人は、あちこちで声かけられるのがそれ。人々にとっての価値のある情報を入手できる能力を持つ人は、それだけでも一つの影響力となる。
3. 報酬性というパワー
一方が他方に、報酬(金銭的・心理的)を与える権限を持つ。経営者と社員の関係など。報酬には賞与、高い評価、ほめることなども含まれる。
4.. 懲罰性というパワー
相手が指示や命令に従わない時は叱責したり、懲罰を与える権限を持つ。軍隊でいう教官(教師)と隊員(生徒)の関係など。
5. 専門性というパワー
専門的な知識や技能、経験を持つ。
6. 準拠性というパワー
人間的魅力、美しい、若さ活力を魅せる、人柄のいい人や周囲から好かれている人は、いざという時、人々の協力を得られる。
急速に変化する時代では、やはり新しい情報に詳しい人は何かと便利です。また、専門的な知識や技能、経験を持っていれば、周囲から一目置かれる存在となり、尊敬・信頼を寄せられます。 人を動かす人物は、相手に対して何らかの影響力を持つので、相手にとって協力することで何かプラスになるのですが、嘉納、稲盛両氏は、徳をもって人を動かしておられ、それを語り、実践されました。