京都府舞鶴市での大相撲春巡業で4日、市長(67)が倒れた際、救命処置をした看護師の女性が土俵から下りるよう場内放送で促された。市長が倒れた直後に駆け付けた市民文化環境部の飯尾雅信部長によると、数人が土俵に上がり、消防関係者とみられる男性が「動かさない方がいい」と話した。その直後に客席から女性が上がり、「医療関係の方ですか」と尋ねられると「看護師です。心臓マッサージができます」と答えた。部長らがネクタイを緩めたり、シャツのボタンを外したりした上で、女性が心臓マッサージを開始。その後、自動体外式除細動器(AED)を持った救急救命士に交代した。多々見市長は搬送後、くも膜下出血と診断。命に別条なく、約1カ月の入院が必要という。
この間、複数回にわたって「女性は土俵から下りてください」というアナウンスが流れ、女性が疑問の声を漏らしたという。看護にあたった女性は「人命救助をしているのに、なぜそういうアナウンスをするのか」という趣旨の発言をしていたことが6日、一緒に救助に当たった市職員への取材で分かった。日本相撲協会側が土俵を下りるよう求めるアナウンスを流した他に、アナウンス以外にも、女性に向かって土俵を下りるよう協会員が直接指示していたことが分かった。関係者によると、最初に土俵に上がった女性のうち1人は、医師でもある多々見市長がかつて院長を務めた病院の看護師。「市長が倒れ、いたたまれずに、とっさに土俵に上った」と話しており、上がる際には「上がっていいですか」と、周囲に声をかけていたという。
5日、兵庫県姫路市で行われた春巡業を見に来た同市のパート女性(51)は、「女性差別的な感じを受けた。伝統を守ることも大事だけど、時と場合による」と批判。また同県加古川市の無職女性(69)は「今の時代は男女平等といわれているんだから、協会は柔軟に考えてもいいのでは」と話した。
6日に春巡業が行われた同県宝塚市では、中川智子市長(70)が土俵上のあいさつを日本相撲協会から断られ、「女性という理由でできないのは悔しい。伝統を守りながら、変革する勇気も大事ではないか」と注文を付けた。協会は「(土俵は女人禁制の)伝統に配慮し土俵の外であいさつしてほしい」と断っており、中川市長はこの日、注文を付けた上で「女性の知事や市長も増えている。女性の総理大臣が現れた時、土俵にのぼってはいけないのか」と疑問を投げかけた。 協会によると、開催地の首長が女性の場合は「土俵脇などからあいさつをお願いしている」という。中川市長は「首長のあいさつは男女を問わず同じ場所ですべきであり、土俵上であるかどうかは別として、平等に同じ対応を徹底してほしい」とコメントした。
中川市長の発言に対し、会場からは拍手が起きるとともに、「(上がっては)いけない」という男性のやじもあった。巡業を見に来た神戸市東灘区の女性会社員(49)は「舞鶴のように救命処置で女性が土俵に上がるのは当然」としながら、「相撲のしきたりを尊重してもいい」と、土俵での首長あいさつは別の問題との見方を示した。「宝塚場所」は今年が2回目で、中川市長は昨年、土俵の下であいさつしていた。
参照:毎日、産経新聞