エミー賞やゴールデン・グローブ賞などに数多くノミネートされた「Commander in Chief(邦題・マダム・プレジデント)」は、主演のジーナ・デイヴィスが、2006年度ゴールデン・グローブ賞 テレビシリーズ ドラマ部門主演女優賞を受賞したドラマです。45歳で大学の学長であったマッケンジー・アレンは、無所属である政治的な思惑によって米副大統領に任命され、執務に邁進していた。そんな折に大統領が緊急入院し、現大統領の首席補佐官ジム・ガードナーからは、大統領が脳腫瘍の緊急摘出手術を受け、もしもの時には、副大統領職を辞任し、下院議長のネイサン・テンプルトンにその座を譲るよう、大統領自らが望んでいると報告を受けるところから、ストーリーは始まる。
後継者問題を解決する前に大統領は息を引き取ってしまい、辞職を考えるも、テンプルトン下院議長の男女差別的な発言を聞くうちに、マッケンジーは合衆国大統領の座に就くことを決断する。悲しみにくれるアメリカ連邦議会と戸惑う国民を前に、力強い就任演説をし、建国以来初の女性大統領としての一歩を踏み出す。しかし、テンプルトン下院議長達が黙っているはずもなく、敵対心を持ち数々の陰謀を企んでいく。
そんな状況下であっても、マッケンジーは国内外に累積する諸問題に果敢に取り組んでいく。マッケンジーだけでなく、初の「ファースト・ジェントルマン」となる夫のロッドや子供たちも、重責を抱えた母親の仕事とともに、大きく環境が変化していく。お年頃の難しい時期の娘と息子、年の離れた末っ子という家族に目配りしながら、彼女の精神的な支えになっている点も見逃せません。有能で誠実な夫の励ましもあってマッケンジーは、妻として母として懸命に目配りしている様をホワイトハウスへ引っ越した大統領公邸でも努力していくシーンを映しています。
アメリカ政治の最高府の家族との日常シーンを捉える一方で、自分を蹴落とそうとする陰険な陰謀や策略にも動じず、誠実に、強固にアメリカ合衆国及び世界のリーダーとして人道配慮の信念を貫き通します。何と言っても女性大統領として威厳と誇りに満ちた態度のマッケンジー大統領が颯爽とカッコ良い演出、脚本になっていています。男性主導で永年に積もり積もった偏見や妨害にも毅然としてた態度で立ち向かい、国内外に累積する諸問題に硬派に取り組んでいく姿は、なるほど女性リーダーが世界をより良く変えていくストーリー展開で、テンポが小気味よいのに、シリーズ2が期待されながら、シリーズ1で中途半端な終わり方をしたため、視聴者から落胆する声が続出したと言われた問題作。日本では2011年のCSチャンネルで放送されました。
女性が国の最高責任者・大統領として辣腕を魅せる破格な内容であったことから、「マッケンジーが無所属で、意地悪なネイサンが共和党だったことを、当時大統領だったジョージ・W・ブッシュが気に入らず、放送時間にわざと国民に向けてのスピーチを流すなどの妨害をした上で、最終的に『打ち切れ』と命じた」というシリーズ続投の妨害節が、いまだに根強く残っているそうです。