幕末に建てられた名主の館
〜大修復で甦る「旧井上家住宅」〜
先月は同じく我孫子市緑の杉村楚人冠の旧宅と村川別荘を取り上げていました。今回の布佐の井上家は享保の改革以来昭和に至るまでずっと私財を投じて干拓事業を続け、相島新田を開きました。家屋は現在我孫子市第一級の文化財として整備事業が進んでおり、すばらしく良い状態で残されています。布佐のまちの小中学校3校は総合学習「ふさカリキュラム」でまちの歴史を学んで実際に訪問します。番組のホームページには360度カメラも! ぜひご覧ください。
江戸時代の初め頃より尾張町(現 銀座6丁目付近)で商家を営んでいた記録も残されている旧家です。江戸中期には、享保の改革の一環として実施された手賀沼の干拓に参入するため、現在の我孫子市布佐の地に移住しました。井上家はこの地で新田開発に取り組み、名主として力を持つようになります。しかし度々襲った利根川の氾濫により、その都度手賀沼周辺も洪水に見舞われ、12代目当主の時代のことで、実に200年以上の歳月がかかりました。ようやく干拓事業が終了したのは何と昭和26年でした。そんな歴史を持つ井上家の敷地内には計6つの建物が現存し、現在順次修復工事が続けられています。
井上家より市に寄贈されて、建物内部および残された古文書などの読解も進み、今まで確認できなかった当時の建築技術や年代の歴史も判明しました。長い歴史を持つ井上家だけに、建物は江戸期から戦前昭和期までのものが混在しています。最も古い建物は主屋で、幕末の安政5年に建てられました。伝統的な上層農家の構えですが、式台玄関などは昭和期の増築で、伝統と近代の融合が見られます。旧井上家住宅は、我孫子の名主の生活を体系的に知ることのできる稀有な存在です。
BS朝日で放映さてたのを見逃されたかたは、下記の番組紹介の動画で少し様子をうかがい知ることができます。
http://www.bs-asahi.co.jp/100nen/lineup/