一昨年、日韓両国は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を世界に表明した。慰安婦問題を含む戦後補償問題は、昭和40年の日韓国交正常化に伴う日韓請求権・経済協力協定で解決済みと明記された。
日韓合意は、北朝鮮が核・ミサイルの挑発を繰り返すなど、東アジアの安全保障の懸念が高まる中、交わされた。日韓関係を改善し、日米韓の連携強化が欠かせないとの判断からだ。
ところが、日中韓の民間団体などが慰安婦関連の資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶(記憶遺産)」に登録申請している問題で、菅義偉官房長官は10月24日の記者会見で、「18日に採択されたユネスコの執行委員会の決議は事務局長や(審査を行う)国際諮問委員会に政治的緊張を回避するよう求めている」と述べ、登録を牽制した。国際諮問委の審査は24〜27日に行われる予定だ。
菅氏は登録された場合の政府の対応や、ユネスコからの脱退については「仮定の質問に答えることは控えたい」と繰り返し、明言を避けた。日本政府は、慰安婦関連資料の記憶遺産への登録はユネスコの政治利用になると反発している。これを受け、ユネスコの執行委は関係国から意見聴取するなどの制度改善を決めたが、適用は2019年の審査からで、慰安婦関連資料は年内の登録が有力視されている。
出典 産経新聞 10/24