各地で孤立死の対処が問題となり、ゴミ屋敷、空家問題も浮上しています。
去年(2016年)11月、岐阜市の住宅で70代の夫婦と、40代の息子の遺体が見つかりました。
両親は死後2か月、息子は引きこもりが長く47才になっていて、地域と疎遠なまま死後1週間ほどが経過していました。直接的な死因は病死か餓死とみられています。支援が必要な家族がいるという情報を得た地域包括支援センターは、去年9月から、介護サービスの申請を促すため何度も訪問しました。しかし、会えたのは2回だけ。そのときも親子は支援を断り、それ以上、行政は対策を取りませんでした。
包括支援センターの職員は「無理に申請をしても、いろいろ署名も書いて頂かなければいけないので、いらないと言われてしまうと、そこからは進めないのが現状。」と事情を話していました。
ところが、こうした問題は特殊な人だけでなく、ごく普通の生活をしていた人たちによってこの問題が起きている実態も分かってきていたのです。妻の急死で落胆、子供も独立して遠方に居住、そこへ生活や健康が極端に悪化。それでも周囲に助けを求めない「セルフ・ネグレクト」と呼ばれる状況に陥っているのです。セルフ・ネグレクトを経験した男性 「生活するだけでいっぱい。 情けない。」
これに対して専門家は 「ごく普通の方でも、高齢になって心身機能が低下してくるとか。 非常にショックな出来事があると、セルフ・ネグレクトに陥る。」そして、配偶者、家族、自分の病気や仕事を辞めるなどさまざまで、年齢に関係なく陥ると考えられています。
かつてセルフ・ネグレクトを経験した60代の女性は、 長年、認知症を患った父親の介護に追われるうちに周囲との交流が途絶えていき、父親を亡くし、そのショックに加え、自らも糖尿病を煩って視力が低下、外出を控えるようになったとのいきさつを話しています。次第に生活環境が乱れ、家はゴミであふれていきました。
しかし、周囲への遠慮から助けを求めることができなかったと言います。
その女性が自宅で倒れていたところを、訪問した支援センターの職員に発見され、一命を取り留めました。 今も生活に手助けが必要なため、介護施設で過ごしています。行政に頼るだけでは対策が追いつかないのが現状です。番組取材した岐阜市にある地域包括支援センターには介護支援や生活保護など通常の相談だけで年間およそ3,000件あり、これを職員8人だけで対応しています。これだけの体制でセルフ・ネグレクトを察知し、対応するのは簡単ではありません。
人口約11万人の岐阜県多治見市では、いたるところに掲げられた孤立死ゼロを目指す協力隊のプレート。
市の呼びかけで、新聞配達や保険会社など86の業種が住民の見守りを行うため結成しました。
配達員は「新聞がたまっていて、出かけているかなと思って、一日様子を見て、次の朝、2階の窓が少し開いていて電気がついていて、これはちょっとおかしいなと思って市役所に電話した。」 その連絡を受けた市の職員が布団の中で倒れている高齢の男性を発見し、救急者で搬送。 男性は意識を取り戻しました。 協力隊が結成されてから2年半。これまでに3人の命が救われました。
セルフ・ネグレクトについて内閣府が6年前に全国の市町村に調査した結果、およそ1万1,000人と推計されています。当時は4割の市町村が回答せず、しかも同じような調査はその後行われていません。専門家はその後、もっと多くのセルフ・ネグレクトが潜在すると指摘しています。地域社会が、近隣者のセルフネグレクトの可能性をどう認識し、大事に至る前に救うか、見守る体制は必要です。
参照:NHKおはよう日本