国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、全国の世帯数は19年に約5300万世帯とピークを迎え、35年には7%少ない約4900万世帯まで減る。 野村総合研究所は衝撃的な予測を発表した。2033年に全国の空き家は2167万戸と13年時点の820万戸から2.6倍に急増し、総住宅数に対する空き家率は13.5%から30.4%まで上昇するという。単純にいえば、自宅の両隣のどちらかが空き家になる計算だ。団塊世代からの大量相続を控え「3軒に1軒が空き家」の時代を迎えるといわれる理由だ。国や自治体も危険な空き家の強制解体などの対策に乗り出している。郊外の住宅地を中心に中古物件などが増える恐れがあるため、維持の手間とコストも考えれば、「安くても売れるときに売るのが賢明」だ。
「日本全体の空き家率が20%を超えると住宅地の荒廃が進むエリアが増える」(野村総合研究所の榊原渉氏)ため、地域にとっても大きな問題だ。空き家を嫌って住民が地域外に流出し、さらに空き家が増えて街が荒れる可能性もある。こうした危惧があるため、15年には「空き家対策特別措置法」が施行された。倒壊する恐れのある「特定空き家」に対し、修繕・解体を勧告したり命令したりする。代執行で取り壊すことも可能だ。相続した実家を持て余す人は「特定空き家」にならないように注意したい。市町村に倒壊や景観を損ねる恐れがある「特定空き家」に指定されると、固定資産税が6倍になる。
これまで、相続税がかからない非課税枠が「5000万円+法定相続人1人あたり1000万円」だったところ、「3000万円+1人あたり600万円」に大幅に減った。それだけ相続税を払わなくてはならない人が増えることになる。相続税の課税対象者は10万人超と、改正前の2倍以上に増える見通しだ。課税対象になる不動産が、売れない事態も起きる。
相続税対策に建てられていた、東京23区や千葉県、神奈川県のアパート空室率は35%前後と高水準だ。相続税対策によるアパートが乱立し、供給過多になっている(不動産調査会社のタス東京・中央)。人口が集中する都市部でさえ、状況は良くない。
空き家の増加抑制には中古住宅の市場活性化も必要だ。住宅流通に占める中古の割合は米国や英国は9割を占めるのに対し、日本は15%程度にとどまる。持ち家を推進するばかりで、ひとたび住めば中古と扱われる住宅政策できたツケでもある。富士通総研の米山秀隆氏は「減税や補助金も活用しながら、良質な中古住宅を循環させる必要がある」と話す。
空き家問題の解決には「税制などを変え、多くの人がセカンドハウスを取得しやすい環境を作り、移動人口を増やすことも有効」(野村総合研究所の榊原氏)との指摘もある。
参照:日経ヴェリタス2016/7/8