このところ、住宅にも目がいっている。空家(特定空家)の増加対策、中古住宅の活用、新築着工の推移、そしてリフォームだけでなく、最近はインスペクション(住宅診断、メンテナンス)という分野が加わってきた。建てては壊す、買っては捨てるではなくて、なるべく使いまわすということだ。
だから、住宅機器、配管を取り替えて、今のお家を使いやすく、しかも建物自体を強固にしていく技術が出てきたのだと知った。
例えば、リキシル社(旧INAX)の洗面台やトイレは、プロガードという技術で御坊対策をしていた。我が家でも、家の機器類を選択するときにショールームで説明を受けて、その製品の良さに実感であった。このプロガードは、陶器の表面を親水性とは逆の「撥水性」(水を弾く性質)にすることで水アカを付きにくくしていたが、陶器面の「親水性なので汚れが付きにくい」という本来の良さは犠牲にしていた。当時の技術では「水アカ汚れ」を防ぐには撥水性の素材を用いるしかなく、「汚物汚れ」と「水アカ汚れ」を同時に防ぐ完璧な対策は見出せなかった。
プロガードが発売されてから実に15年後、世界初の新素材」の開発がスタートした。日本のモノづくりは技術を地道な研究で磨き上げる工夫の積み重ね、一種のこだわり、愛情でもある。そもそも、水アカが陶器に固着するのは、陶器の表面に出ている水酸基(−OH)に水道水中の水溶性シリカ(ケイ酸)が化学的に結合してしまうため。既存の「プロガード」は、この水酸基が陶器表面に出ないよう、撥水性の素材で覆っていた。「汚物汚れ」を防ぐ超親水性の特殊素材を陶器表面になじませ、陶器に一体化させることができるのではないかと考えが生まれた。 果たしてその仮説は的中。しっかりと「汚物汚れ」を防いだ上、水アカの固着も防止できる!更には、後からコーティングする手間が省けるため、コストがそれまでの10倍から2倍にまで激減。また、耐久性も飛躍的にアップした。さらに細かい改善を繰り返し、技術的な“OK”が出たのは2015年の3月。
ところが、思わぬ事態が発覚・・・。それは、“水の勢いが良くなりすぎてしまう”こと!?
LIXIL(リキシル)のトイレは、少ない水で汚物を効率的に流すため、水の流れ方をミリ単位で設計していた。そのため、超親水になったことで水の流れが良くなりすぎ、勢いで洗浄水が外に飛び出してしまうトラブルが続出したのだ。 「水の流れを修正する“チューニング”が全商品で必要だ」との判断がされ、品番でいうと7万点以上のチューニングを「すべてやろう。」と決断した。営業側もこの新素材にかけていることがわかっていたからだ。
そして、1997年にプロジェクトがスタートしてから約20年。ついに衛生陶器の常識を覆す『アクアセラミック』が、世に送り出す画期的なモノがつくられた。
しかし、その先にどう知って、選んで買ってもらえるか、勝負どころだ。
それをわかりやすく伝えなければ“絵に描いたモチ”。
「より多くのお客様に知ってもらい、一人でも多くの人に使ってもらいたい」
研究にかかわった側も商品開発だけに留まらず、その良さを伝えるためのプロモーション手法をも追求した。そこで作り上げた“インパクト”のあるデモンストレーションと、“100年クリーン”というキーワードに辿りついた。商品名は『アクアセラミック』となった。
「他にはない、自信を持ってお客様に使っていただけるものになった」 「4つの汚れすべてに対応する商品は、自分たちの長年の夢。“汚れをなんとかして!”というお客様の願いにも応えられる」と、そろって胸を張った。
2016年4月。
様々な苦難を乗り越え、世に送り出された『アクアセラミック』。現在、“あらゆる汚れに強い”トイレとして、注目を集めている。彼らは単に製品開発をしているのではない。
“幸せな暮らし”を作っているのだ。
そう、市役所だって、それこそ住民の幸せな暮らし、この街に暮らして良かったと笑顔を見る仕事をすべきだろう。物語はいくつも生まれてきた、それを誇りをもって語れる職員、市民がどれほどいるか、それがじゅうようなのかな、とトイレ物語を知って考えさせられた。
参考HP:LIXIL